(Frankel (British racehorse) winning at Doncaster, September 2010)出典:wikipedia
フランケルという馬をご存じでしょうか。
2017年のオークスを制したソウルスターリングや2018年の安田記念を制したモズアスコット、2015年のファンタジーステークスを制したミスエルテのお父さんですね。
フランケルとはイギリスの競走馬です。
競争成績は14戦14勝。
無敗の競走馬です。
そのうち10個のG1タイトルを手にしました。
主にマイルを中心に使われ、いずれのレースも圧倒的なパフォーマンスで勝利をもぎとりました。
今でこそ繁殖馬として活躍しているフランケルですが、現役時代、どのような活躍をしていたのか。強さの根源を見ていきたいと思います。
血統
父 |
父父 |
父母 アーバンシー |
|
母 Kind |
母父 デインヒル |
母母 Rainbow Lake |
父親はイギリスダービー、アイルランドダービーを制したガリレオ。母親は現役時代に準重賞を制した2勝しているカインドです。
カインドの半兄はゼンノロブロイが制した2004年のジャパンカップに出走したパワーズコートです。
母の父であるデインヒルは短距離G1を1勝。繁殖馬となってからはアイルランドとオーストラリアを行き来し、世界的にも大成功を収めたリーディングサイヤーです。
新馬戦
新馬戦は良血馬であることから、1番人気に支持されました。しかしながらデビュー戦はフランケルにしては意外と辛勝勝ちでした。
相手候補で最有力だった馬にナサニエルという馬がいました。
このナサニエルは後にキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(G1)、エクリプスステークス(G1)を制します。
また、ナサニエルの初年度産駒には凱旋門賞を2連覇し、空前の3連覇を目論む牝馬のエネイブルがいます。
ナサニエルの存在から、フランケルの初戦の相手は意外と手ごわく、レースも1/2馬身の1着入選と、フランケルにしては珍しい辛勝勝ちでした。
ちなみに3着以下には5馬身近く突き放して勝ち切っているのでフランケル・ナサニエルともに強い馬であることが証明されました。
2歳のフランケル
ナサニエルとの戦いを制したフランケルは新馬戦の約1か月後に条件戦に出走します。日本競馬では考えられない3頭立てのレースでフランケルはほぼ馬なりのまま2着馬レインボースプリングスに13馬身差をつけて快勝します。
そして、中1週を挟んで開催されたロイヤルロッジステークス(G2)でも10馬身差をつけて快勝しました。
血統面も優れていましたが、それ以上にフランケルの勝ちっぷりに欧州の競馬ファンは歓喜しました。
この年の締めに選んだのはG1、デューハーストステークスでした。
この時2戦2勝のサーミッド、3戦3勝でG1を制したドリームアヘッドらが出走し3強対決が注目されました。
レースは6頭立てで開催され、注目されたサーミッド、ドリームアヘッドらが直線でいまいち伸び切れていない中、1頭だけするすると抜け出して2・1/4馬身差をつけて勝ち切りました。
この年は4戦4勝してシーズンを終えることとなりました。
レーティングは133ボンドと、2歳馬としては破格の評価を受けることとなりました。
3歳のフランケル
春の最大目標は2000ギニーステークスに照準を絞ったフランケル陣営。
2000ギニーステークスとはイギリスのクラシック一冠目のレースで、日本でいう皐月賞に当たります。
しかしながら、ぶっつけ本番で挑むのはさすがに無謀だという調教師の判断から前哨戦であるグリーナムステークス(G3)を選択します。
後に5戦戦うエクセレプレーション相手に4馬身差突き放して勝ち切ると、目標通り2000ギニーステークスに出走することになります。
レースは逃げの競馬でそのまま後続を突き放して、2着馬に6馬身差をつけてクラシック1冠目を奪取しました。
その後はダービーステークスを選択するかと思われましたがマイルまでしか走っていないことから、次走はセントジェームスパレスステークス(G1)に出走することになりました。
このレースは3歳の牡馬限定のレースで、牝馬、騙馬は出走不可能です。
各国の2000ギニーを制した馬が勢ぞろいする牡馬限定のNHKマイルカップのようなレースです。
日本からも朝日杯FS、NHKマイルカップを制したグランプリボスが出走したことで少し話題性のあったレースです。
レース内容としてはフランケルには珍しく後方3番手くらいの位置で控えながら競馬をすると、残り1000mから超ロングスパートにでます。
5馬身ほど差をつけて後続を突き放しましたがゴール前でさすがのフランケルも失速しました。
後続馬が詰め寄ってきましたが最後の最後に踏ん張りを利かせて3/4馬身差でなんとか勝利しました。
レースを勝ったものの、早仕掛けをしたトム・クウィリー騎手に非難が集まることとなりました。
次に視野に入れたのはサセックスステークス(G1)。
上半期のイギリス最強マイラー決定戦ともいえるレースで、日本でいう安田記念のポジションに位置するレースです。
ここではキャンフォードクリフスという馬が最大の相手となります。
キャンフォードクリフスはこの時G1を5連勝中、昨年のサセックスステークスの勝ち馬で前走、クイーンアンステークスでG1を14勝したゴルディコヴァに勝ち切っています。
フランケル、キャンフォードクリフスという2強がそろった影響か、各陣営は出走を控える形となり、G1らしからぬ4頭立てのレースとなります。
レースは2強の激突に思われましたが、フタを開けてみれば終始前で競馬をしていたフランケルが直線に入って一気に加速し、後続をどんどん突き放し、そのままの勢いでキャンフォードクリフスに5馬身差の圧勝劇でした。
古馬最強マイラーであるキャンフォードクリフスをもあっさりと蹴散らしたフランケル。
フランケル陣営はこの年の締めに、秋に開催されるクイーンエリザベス2制カップを選択しました。
サセックスステークスで敗れたキャンフォードクリフス陣営もこのクイーンエリザベス2世カップでフランケルとの再戦を目標にしていたそうですが、サセックスステークスの8日後にキャンフォードクリフスに骨折が判明し、安静と今後の繁殖馬としての生活を考慮し、引退することとなりました。
このクイーンエリザベス2世カップでは今年の初戦、グリーナムステークスで対決したエクセレブレーションが出走することになりました。
エクセレブレーションはグリーナムステークスでフランケルに敗れたあと、着実に実績を重ね、フランスのムーラン・ド・ロンシャン賞(G1)で古馬相手に勝ち切りました。
最強のフランケルか、苦労馬エクセレブレーションか。
注目された一戦でしたが、いざレースがはじまると、いつものように直線で後続を突き放して2着馬エクセレブレーションに4馬身差の勝ちっぷりを見せつけました。
リベンジに失敗したもののエクセレブレーションは2着に入選。
3着馬はジャックルマロワ賞勝ち馬のイモータルヴァースと、レベルの高い一戦であることが証明されました。
4歳のフランケル
この年の第一戦をロッキンジステークス(G1)に定めたフランケル陣営。
しかしながらフランケルの調教中に後肢を前肢にぶつけるアクシデントが発生しました。
幸い、軽症ですぐに調教再開できたものの、フランケルの注目度は欧州で留まることを知らなかったため、調教中の怪我で引退するといった誤報が流れるといった珍事がありました。
無事に調教し、迎えた初戦のロッキンジステークスではいつものような勝ちっぷりで2着馬エクセレブレーションに5馬身差の圧勝。
次走、クイーンアンステークス(G1)でも怒涛の勢いで2着馬エクセレブレーション相手に11馬身差をつけて圧勝しました。
このクイーンアンステークスの勝利で、イギリスで出走できるマイルのG1は2歳限定戦のレーシングポストトロフィーを除いて全てのタイトルを制しました。
次走に選んだのはサセックスステークスです。
フランケルにとっては連覇を狙う一戦となりましたがフランケルが出走することを恐れてか、有力馬はほとんど回避。
フランケルに散々辛辣を味わったエクセレブレーションも回避したことで、有力馬不在の4頭立てのレースとなりました。
もちろん、相手関係も楽になったフランケルは6馬身差をつけて完勝しました。
マイルで獲るべきレースを一通り獲ってしまったフランケルはいよいよ距離延長を図ることとなります。
日本馬でも安田記念・マイルチャンピオンシップ・香港マイル・香港チャンピオンズマイルを制して、距離延長に挑んだモーリスがいますが、心境は似たようなものだったことでしょう。
サセックスステークスの3週間後に開催されたインターナショナルステークス(G1)にて、初の中距離戦を行います。
相手で強敵だったのは2400mのG1を3勝している追い込み馬セントニコラスアビー、前走、フランケルに敗れたもののフランケル同様中距離でリベンジを狙うファーでした。
それでもフランケルは圧倒的一番人気でレースに出走します。
レースはフランケルが珍しく出遅れて、追い込み馬であるセントニコラスアビーの後方で競馬することとなりました。
しかし、直線で鞍上のウィクリーがほとんど手を動かさないままにフランケルがあっさりセントニコラスアビーをかわして先頭に立つと、ぐんぐんと加速し2着馬ファーに7馬身差で圧勝してしました。
中距離でも対応できることが証明され、秋の最大目標をチャンピオンステークスに設定しました。
このチャンピオンステークスでは新馬戦以来の対決となるナサニエル。
前年の勝ち馬で中距離部門のレーディングで世界第2位のシリュスデゼーグルといった面子がそろいました。
フランケルの引退レースにくわえて、G1ホースが集結したことで、欧州の競馬ファン、競馬関係者の注目は最高潮に達しました。
このレースでもスタート直後に出遅れてしまいました。
しかも、この時の馬場は雨の影響で重馬場。くわえて相手関係で強豪と言われたシリュスデゼーグルは不良馬場巧者でした。
重馬場の舞台で、フランケルが果たして対処しきれるのか、ファンも関係者も注目します。
しかしながらうまくペースをつかむと直線で余裕のある追撃をはじめます。
ラスト1ハロンでシリュスデゼーグルを交わし1・3/4馬身差で勝利。
有終の美を飾ることとなりました。
フランケル その圧倒的な強さの根源
フランケルは主に1400m~2000mで競馬をした馬です。
クラシックは1冠のみの制覇となりましたが最終的にはG1・10勝を制しました。
フランケルの強さの根源はやはり先行競馬からの疲れを感じさせないスパートでしょう。
後続を置き去りにするパフォーマンスはフランケルの強さを証明しています。
フランケルが戦った相手も全く弱くありません。
例えば2回戦ったナサニエルはガリレオ産駒の良血馬で、キングジョージ6世&ウイーンエリザベスカップ、エクリプスステークスと、2つのG1ホルダーを掴んでいます。
そして当記事でよく名前の挙がったエクセレブレーションはマイルのG1を3勝しました。
フランケルと5回戦ったうちの3回がG1の舞台でフランケルの2着でした。
フランケルさえいなければもっとG1タイトルを手にしていたかと考えると、ある意味気の毒な馬といえるでしょう。
そのナサニエルやエクセレブレーションといった名馬相手に強い勝ちっぷりをしたのはフランケルの圧倒的なポテンシャルの高さでしょう。
現在は繁殖場として世界中にフランケルの血を継いだ馬がターフで走っています。
今後も、フランケル産駒の活躍に期待したいですね。
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