JRAでは毎年その年に活躍した馬をカテゴリーに分けて表彰します。
具体的には
最優秀2歳牡馬
最優秀2歳牝馬
最優秀3歳牡馬
最優秀3歳牝馬
最優秀4歳以上牡馬
最優秀4歳以上牝馬
最優秀短距離馬
最優秀ダートホース
最優秀障害場
そしてその年もっとも活躍した馬を
年度代表馬
と呼びます。
これらのカテゴリーを総称してJRA賞と呼びます。今回はその中で最優秀3歳牡馬を獲得した馬をまとめました。
2001年から2018年までのデータをまとめています。
最優秀三歳牡馬とは
その前に最優秀三歳牡馬について簡単に説明します。最優秀三歳牡馬はその年に活躍した三歳の牡馬を讃える賞です。
後述する馬を見てもらえたらわかるようにほとんどの馬は何らかのクラシックを獲得し、なおかつクラシック以外のレースでも上位争いしている馬が多いです。
なお、その年、賞を贈られる馬は放送・新聞記者らによって行われる投票式で決まります。最も票数が入った馬がその年の最優秀馬として選ばれます。
これに関しては最優秀三歳牡馬に限らず全てのカテゴリーで共通しています。
2001年 ジャングルポケット 投票数225/283
この年はダービー馬であるジャングルポケットが選ばれました。
皐月賞は3着、菊花賞は4着でしたがジャパンカップにて前年の競馬界を大いに盛り上げたテイエムオペラオーを打ち破ったことで表彰されたのでしょう。
東京競馬場で3戦3勝と無敗の成績を持っています。逆に中山競馬場の小回りコースは3戦して(0-0-1-2)と苦手で、得意不得意のはっきりしていた馬でした。
2004年の有馬記念のあとに蹄球炎が発覚し、引退。引退後はポストトニービンとして種牡馬入りしました。
2002年 シンボリクリスエス 投票数280/281
ほぼ満票でシンボリクリスエスがランクインしました。
3歳時は皐月・菊花賞府参戦という異例な実績を持ちながらもダービーで2着。快勝した神戸新聞杯の次走に選んだ天皇賞(秋)を制し、暮れの有馬記念をも制したことで選ばれました。
古馬になってからもその実力は健在で、天皇賞(秋)・有馬記念を連覇し、引退しました。3歳、4歳の段階で天皇賞(秋)→ジャパンカップ→有馬記念の秋の中距離G1ローテーションを完走。3歳のとき、4歳のときのジャパンカップはともの3着だったため2年連続で天皇賞(秋)1着、ジャパンカップ3着、有馬記念1着でした。
種牡馬となってからは菊花賞、ジャパンカップを制したエピファネイア、3歳の時点でダートのG1を4つ制したルヴァンスレーヴを輩出しています。
2003年 ネオユニヴァース 投票数284/287
現役時代は皐月賞とダービーを制覇しました。
当時短期免許で来日したデムーロ騎手が皐月とダービーを制しましたが、短期免許の期限の関係で菊花賞にデムーロ騎手とネオユニヴァースが出走できなかったことに対しての抗議が発展し、短期免許のルール改正に至った話は有名ですね。
内約は
「同年内に同じ騎手でG1を2つ以上獲得した馬は、同年内のG1の該当馬に限り、そのG1開催日のみ免許が発行できる」
というもので、これによりデムーロ騎手は菊花賞にネオユニヴァースと共に出走できることとなりました。
余談ですが、このルールはここから16年後の2019年の有馬記念にてオーストラリアのD.レーン騎手と牝馬のリスグラシューのコンビにて再び採用されることとなり、見事優勝を果たしています。
話を戻して、古馬になってからは天皇賞(春)を最後に屈腱炎が判明し、引退。種牡馬入りしました。
ネオユニヴァースの有名産駒は
ダービーを制したロジユニヴァース
有馬記念を制したヴィクトワールピサ
香港のクイーンエリザベス2世カップを制したネオリアリズム
がいます。
2004年 キングカメハメハ 投票数281/285
この馬に限っては現役時代の活躍よりも繁殖馬としての功労のほうが讃えられるのではないでしょうか。
現役時代にNHKマイルカップ→ダービーの変則二冠を達成。秋は快勝した神戸新聞杯を最後に、屈腱炎が発覚し、そのまま引退となります。
引退後は種牡馬入りし2004年から2018年まで種牡馬としての役割を全う。サンデーサイレンス系色の全くない馬でなおかつ産駒が非常に活躍していることから多くの繁殖牝馬と種付けが行われました。
有名な産駒は挙げればキリがないので5頭だけピックアップします。
短距離最強馬であるロードカナロア
史上3頭目となる牝馬三冠を達成したアパパネ
中央地方と合わせて10のG1タイトルを獲得したダート馬ホッコータルマエ
社台の総決算ともいえるドゥラメンテ
ダービーを制したレイデオロ
このほかにもG1、重賞を獲得した馬は数多く存在します。種牡馬として大活躍しましたが2019年の8月に亡くなりました。
2005年 ディープインパクト 投票数291/291
もはやいうまでもない名馬中の名馬で、競馬を全く詳しくない人でもこの馬の名前は分かる人も多いはず。史上6頭目となる三冠馬。
無敗で挑んだ有馬記念こそハーツクライに先着を許してしまいましたが古馬になってからも天皇賞(春)、宝塚記念、ジャパンカップ、そして暮れの有馬記念を見事勝ち切り有終の美を飾りました。
種牡馬入りしてからもその目覚ましい活躍から多くの繁殖牝馬と交配。数多くの産駒を日本競馬界に輩出したことから前年のダービー馬であるキングカメハメハとならんで種牡馬の2台巨頭とまで呼ばれます。
キングカメハメハ同様活躍した産駒をすべてまとめるとなると専門の記事を用意したほうがいいレベルになるので特に有名な馬をあげます。
初年度産駒で京都巧者のトーセンラー
G1タイトルを7つ獲得した三冠牝馬のジェンティルドンナ
ジェンティルドンナがいなければG1タイトルをもっと掴めたであろうヴィルシーナ
ダービー馬キズナ
多くのファンを魅了したサトノダイヤモンド
なお、ディープインパクトは5頭のダービー馬を輩出しています。
ディープブリランテ
キズナ
マカヒキ
ワグネリアン
ロジャーバローズ
種牡馬として目覚ましい活躍をしていましたが、2019年の7月に頸椎の骨折のために安楽死となります。ディープインパクト死亡から約10日後に大型種牡馬であるキングカメハメハも亡くなり、2頭の名馬が亡くなることとなりました。
2006年 メイショウサムソン 投票数284/289
この年の皐月賞とダービーを制しました。古馬になってからも天皇賞(春)・(秋)を制した馬です。
5歳時も現役で走り続けましたがそれまでほどのパフォーマンスを発揮することはできずに有馬記念で引退することとなります。引退後は種牡馬入りしました。
有名な産駒は
函館記念を制したルミナスウォリアー
中山牝馬Sを制したフロンテアクイーン
福島牝馬Sを制したデンコウアンジュ
がいます。
2007年 アサクサキングス 投票数254/289
この年の菊花賞馬。菊花賞以外の重賞勝ちはきさらぎ賞のみでしたが、この年のダービー馬が牝馬のウオッカだったため、最優秀牡馬に選出されました。
古馬になってからは大きな活躍しませんでしたが京都記念や阪神大賞典を制しています。
2008年 ディープスカイ 投票数300/300
NHKマイルカップ→ダービーという変則二冠を達成したのはキングカメハメハ以来です。神戸新聞杯を最後、引退するまで勝ち星に恵まれませんでしたが常に複勝圏内に入選していて安定感のある馬でした。
引退後は種牡馬として活躍。代表産駒は京都記念の勝馬であるクリンチャーです。
ちなみにディープスカイはディープの冠名を持っていますが父はアグネスタキオンです。
2009年 ロジユニヴァース 投票数235/287
2003年のダービー馬であるネオユニヴァースの仔であるロジユニヴァースは日本ダービーを制したことで父子でダービーを獲得しました。3歳の時はダービーを勝ちましたが、脚の疲れが取れず、ダービーを最後に3歳は全休します。
古馬になってからは日経賞から復帰しましたが6着に敗れ、勝ち星をあげられません。古馬になってから走ったのはわずか4戦。
4歳のときの札幌記念の2着が最高着順で、古馬になってからは思うように活躍できず、引退しました。
2010年 ヴィクトワールピサ 投票数280/285
獲得したクラシックは皐月賞。
この年は菊花賞に向かわずフランスの凱旋門賞に挑み7着でした。帰国初戦の有馬記念でブエナビスタを抑えてグランプリホースの座を獲得したことで最優秀三歳牡馬に選ばれました。
古馬になってからはダートのドバイワールドカップを制したことで、日本馬初となるドバイワールドカップ勝馬となりました。
引退後は種牡馬入りしました。有名な産駒は桜花賞を制したジュエラーです。
2011年 オルフェーヴル 投票数285/285
ディープインパクトと同じクラシック三冠馬でありながらその気性の荒さと凄まじい強さで多くの人を大いに沸かせました。3歳の有馬記念ではヴィクトワールピサやブエナビスタを抑えて勝ち切り、3歳にしてG1を4つ獲得し、選ばれます。
古馬になってからもその気性の荒さと強さは健在。阪神大賞典でいったん競馬をやめてから巻き返しを図ったのはもはや伝説。凱旋門賞にて日本馬初となる凱旋門賞制覇をすんでのところでかわされたのも伝説。引退レースとなった有馬記念で8馬身差で自ら花道を飾ったのも伝説的ですね。
有終の美を飾って引退した後は種牡馬入りします。
初年度から
エリザベス女王杯を制したラッキーライラック
皐月賞を制したエポカドーロ
を輩出し、産駒の活躍にも期待がかかります。
2012年 ゴールドシップ 投票数289/289
オルフェーヴル同様、気性の荒さが有名な馬です。芦毛のうつくしさとともに多くの人を魅了しました。
獲得したクラシックは皐月賞と菊花賞です。暮れの有馬記念で初と古馬戦にもかかわらず勝ちきったことで最優秀三歳牡馬に選ばれました。
古馬になってからもその強さは健在で、宝塚記念2連覇、阪神大賞典を3連覇しています。最終的に手にしたG1タイトルは6つ。
6歳になってからは成長のピークを過ぎたのか、上位争いできませんでしたが、多くの人に愛された馬です。
2013年 キズナ 投票数242/280
この年のダービー馬で武豊騎手はディープインパクト以来のダービー騎手となります。
3歳の時にフランスの凱旋門賞で4着になったりと健闘していましたが4歳の春に屈腱炎が判明し、長期離脱することになります。5歳のときに復活しましたが上位入選することはありません。
種牡馬としての価値に期待を込めて5歳の春に引退します。
2019年にキズナ産駒がデビューし、この年の函館2歳ステークスでキズナの仔であるビアンフェが勝利し、産駒初重賞制覇を達成しました。
2014年 イスラボニータ 投票数170/285
ワンアンドオンリーに61票差をつけて選ばれました。
獲得したクラシックは皐月賞。それ以外にもダービーで2着であったり、天皇賞(秋)で3着に入選した堅実な走りが評価されたのでしょう。
また、同期のダービー馬であるワンアンドオンリーが神戸新聞杯を最後に大敗に喫したことも相対的にイスラボニータの評価を上げる要因になったと思われます。
古馬になってからはマイル路線で活躍します。古馬になってからG1タイトルを手にすることはできませんでしたが、ほとんどのレースで上位入選する馬で馬主孝行の馬でした。
引退レースとなった阪神カップではダンスディレクターを僅差で退け見事優勝。この時の勝ちタイム1.59.5は阪神芝1400mにおけるレコードタイムで、2019年にグランアレグリアが0.1秒更新するまでレコードホルダーでした。
2015年 ドゥラメンテ 投票数285/291
社台ファームの結晶ともいうべき馬。父はキングカメハメハ。母はエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴで、アドマイヤグルーヴの父は大型種牡馬であるサンデーサイレンス。アドマイヤグルーヴの母であるエアグルーヴの父はトニービン。
大型種牡馬の血が集約された馬がこのドゥラメンテ。超がつくほどの良血馬であるドゥラメンテはこの年の皐月・ダービー馬を制しました。
この世代でも活躍に期待がかかりましたが虚弱体質に泣かされ、ダービー後に骨折が判明。秋を全休することとなりました。
復帰戦となった中山記念では休み明けをものともしない走りで同期のリアルスティールや先輩皐月賞馬であるロゴタイプ、イスラボニータに先着。
その後、春のグランプリである宝塚記念に挑みます。直線で猛追しますが伏兵マリアライトには届かずの2着。そしてゴール板通過した直後に骨折が判明し、そのまま引退することとなりました。引退後は種牡馬入りします。
前述したように多くの繁殖牝馬は近新配合になるため外国の牝馬との交配が行われているようです。
2016年 サトノダイヤモンド 投票数286/291
菊花賞でもあり、暮れの有馬記念で当時現役最強馬と言われていたキタサンブラックを僅差で捕らえて見事選出。
サトノの冠名を持つ馬はG1タイトルをつかめないというジンクスを一番最初に打ち破った馬です。
一度ジンクスが打破されたからはこの年の朝日杯FSにてサトノアレスが、この年の香港ヴァーズでサトノクラウンが勝っているようにG1タイトルを勝つ馬が増えてきました。
4歳の春まではパフォーマンスをフルに発揮していましたがフランスから帰国した5歳以降に非常に調子を落としていて、暮れの有馬記念も6着に敗れて引退しました。
それでも京都大賞典にて久々に勝利の美酒をあげると多くのファンからの歓声が淀に響きまわったことからファンの多い馬です。引退後は種牡馬入りしました。
2017年 レイデオロ 投票数289/290
ほぼ満票でこの年のダービー馬レイデオロが入選しました。
獲得したクラシックはダービーのみですが、秋の初戦に選んだ神戸新聞杯の強い競馬、ジャパンカップにてこの当時最強馬といっても過言ではなかったキタサンブラックに先着した実力が見込まれ、選出されました。
2018年の天皇賞(秋)を制したりと古馬になってからも活躍していましたが2019年の成績はそれまでとは打って変わって調子が上がりません。この年の有馬記念を最後に引退することとなりました。
2018年 ブラストワンピース 投票数114/276
この年のクラシックを獲得できなかったにもかかわらず選ばれた珍しいケース。
クラシックは獲得できませんでしたがこの年の有馬記念にて一頭出馬を表明した3歳馬にして、その有馬記念でレイデオロやキセキを抑えて見事優勝しました。
票数を見てもらえたらわかるように非常に票数が分かれたようですが最優秀牡馬に選ばれることになりました。
まとめ
以上が2001年から2018年の最優秀三歳牡馬のまとめになります。
古馬になって活躍している馬、もしくは種牡馬入りして活躍している馬のほとんどは最優秀三歳牡馬に選出されていますね。
また、同じ世代で活躍したにもかかわらず抜けた馬が存在していたために選ばれなかった馬も影にいることが分かります。最優秀三歳牡馬は放送・新聞記者が携わるため多くの人が納得する結果となりますね。
今後のJRA賞にも期待したいです。