出典:wikipedia
「過去日本の競走馬で、最も強かったと思う馬は?」
ときおりこんな問いにぶつかることがあります。
これまでには各種メディアで、こういった趣旨のアンケートが少なくとも一度はあったかと思います。
確かに、競馬ファンであれば、時代がいくら進んでもこの手の話題はいつも盛り上がりますし「どの馬が最強か」というのは、永遠のテーマといえるのかもしれません。
過去の名馬の最強論争に関するみなさんの「率直な気持ち」はいかがでしょうか?
やはり「ディープインパクト!」とお答えになるファンが多いのではないか思います。
あるいは時代が近いということもあって、「オルフェーヴル!」と答えるファンもいるかもしれませんね。
とすると、「いやいや、オルフェーヴルに勝って海外含むGⅠ勝利数でも上回ったのだから、やっぱりジェンティルドンナでしょう!」と主張するファンも少なくないでしょう。
はたまた、完全無欠の皇帝・シンボリルドルフこそ最強だとゆずらないオールドファンがいても不思議はありません。
それならば、純粋なポテンシャルでいえばナリタブライアンは世界最強だったとするファンの声も未だ根強く聞かれます。
クロフネのダートでの怪物ぶりはケタ違いでしたし、凱旋門賞に通じる固く閉ざされた扉をこじ開けたエルコンドルパサー、快速サイレンススズカ、奇跡を起こしたオグリキャップやトウカイテイオー、悲運の名馬ホクトベガ・・・きっといろいろな声が挙がると思います。
あれ?
1頭、こちらも手が付けられないほど強かったはずの名馬をお忘れではありませんか?
ほら、どんな競馬でもできて、着差は小さいけれど、いつだって先頭ゴールをひたむきに守り続けてきた名馬・・・そう、テイエムオペラオーです。
今回は、シンボリルドルフ、ディープインパクトに並ぶJRAのGⅠ7勝を挙げたテイエムオペラオーにスポットを当ててみたいと思います。
血統
父 オペラハウス |
父の父 |
父の母 Colorspin |
|
母 ワンスウエド |
母の父 Blushing Groom |
母の母 Noura |
実績は国内随一だったテイエムオペラオー
もちろん、過去の名馬を挙げるとき、イの一番に「テイエムオペラオー!」と答えるファンだって少なくないとは思います。
ただ、ディープインパクトやシンボリルドルフ、オルフェーヴルやオグリキャップ、トウカイテイオーなどとくらべると、実績ではディープ、ルドルフと並ぶ国内最高のGⅠ7勝馬でありながら、その知名度は多少落ちるというのが実際のところでしょう。
何しろディープやルドルフ、オグリあたりは、競馬ファンでなくてもその名前を耳にしたことがあるはずです。
しかしオペラオーは、これらの超スーパースターに比肩するか、見方によってはそれ以上だった可能性があるにもかかわらず、「社会現象にはならなかった名馬」の1頭でした。
シンボリルドルフ、ディープインパクトとの成績比較
成績は優るとも劣らないのに、それではこの差はいったい何なのか・・・試みに、同じ国内GⅠ7勝馬のシンボリルドルフ、ディープインパクトと成績を比較してみることにしましょう。
シンボリルドルフ(岡部幸雄騎手)・・・16戦13勝2着1回3着1回(海外含む)
主な勝ち鞍・・・クラシック三冠、有馬記念(2回)、天皇賞春、ジャパンカップ
獲得賞金額・・・68,482.4万円(6億8482万円)
ディープインパクト(武豊騎手)・・・14戦12勝2着1回(海外含む)
主な勝ち鞍・・・クラシック三冠、天皇賞春、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念
獲得賞金額・・・145,455.1万円(14億5455万円)
テイエムオペラオー(和田竜二騎手)・・・26戦14勝2着6回3着3回
主な勝ち鞍・・・皐月賞、天皇賞春(2回)、宝塚記念、天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念
獲得賞金額・・・183,518.9万円(18億3518万円)
テイエムオペラオーが能力面でルドルフやディープに劣ったとはまったく言えません。
オペラオーは他の2頭とちがって「三冠馬」の称号がないので、この点で劣っているではないか、の声が挙がるかもしれませんが、私はこれを真っ向から否定します。
なぜなら、同じ世代が相手のレースは確かに皐月賞しか勝っていなくても、もっとレベルの高い全世代の戦いでは、ルドルフやディープを上回る「GⅠ6勝」を誇ったからです。
同じGⅠ7勝馬ならむしろオペラオーが一番すごい成績だったといっても過言ではないはずです。
ただ、三冠馬というのは、ルドルフやディープを含め過去に7頭しか達成していないという「希少性」の点で、オペラオーはどうしても劣ってしまうのです。
希少性の差が、そのまま知名度や社会性の高さの差につながってしまったと、私は考えています。
また、ルドルフのような完全無欠なレースぶりではなかったこと、ディープのように美しく他馬をぶっちぎって勝つようなタイプではなかったことも、オペラオーの人気度という点でどうしてもマイナスになってしまうのです。
ルドルフのように早目先頭から他馬をねじ伏せるような強さは確かにオペラオーにはなかったですし、ディープのように大外をひとまくりでまくりきってしまう瞬発力もオペラオーにはありませんでした。
馬群をしぶとく縫うようにして最後の最後で先頭に立つ・・・そうした勝負根性なら、さすがにルドルフ相手ではわかりませんが、少なくとも「日本の至宝」と呼ばれたディープインパクトにも、テイエムオペラオーは決して負けていなかったと私は思います。
ただ、まことに残念なことに、「勝負根性」というのはファンに一番わかりづらく、理解されづらいファクターであることもまた事実なのです。
種牡馬としての不運がテイエムオペラオーに陰を落とす
リーディングサイアー争いはサンデーサイレンス以来の独走状態であるディープインパクト、その代表産駒のジェンティルドンナは、父に並ぶGⅠ7勝(海外含む)を挙げ、やはり父と同じく顕彰馬に選出されました。
シンボリルドルフは、大スターのトウカイテイオー(クラシック春2冠を含むGⅠ4勝、顕彰馬)を輩出し、種牡馬としても成功をおさめました。
過去の偉大な名馬シンザンも、偉大なスターホース・ミホシンザンを輩出しました。
おそらくオルフェーヴルも種牡馬としての成功は堅いと評価されています。
では、テイエムオペラオーはどうかというと、残念ながらここまで平地の重賞勝ち馬を出していない(障害では2頭重賞勝ち馬を輩出)という点で、イメージ的にかなり大きなマイナスポイントになってしまっています。
しかも、どちらかといえば人間の都合でテイエムオペラオーの種牡馬としての可能性をつぶされてしまったイメージが大きいです。
特に、「ファンのこころない行動(その詳細は不明)」がテイエムオペラオーの種牡馬としての活躍の場を狭めたという、同じ競馬ファンとしてあまりにも悲しいできごとがオペラオーの身に降りかかってしまったという不運もあり、テイエムオペラオーは種牡馬として今なお「孤独な戦い」を続けている印象があります。
未来を切り開いてきた名馬テイエムオペラオー
たとえばステイゴールドは、オペラオーと同じくヨーロッパ系の血が濃いステイヤーだったメジロマックイーンの力を借りることで、種牡馬として唯一ディープインパクトの牙城を崩す可能性を持ったサイアーでした。
国内GⅠ勝利がなかったステイゴールドは、まさに自分の力で現在の地位を確立した大種牡馬でした。
個人所有のオペラオーに同じことを望むのはあまりにも酷なことかもしれませんが、私たちオペラオーのファン、いや、競馬ファンは偉大な名馬テイエムオペラオーが奇跡を起こすことをあきらめていません。
競走馬時代、馬群をこじ開けるようにして最後の最後には必ず先頭に立ったオペラオー・・・現役時代のように、きっと自ら未来を切り開いてくれると信じたいものです。
テイエムオペラオー(牡20歳)・・・父オペラハウス、母ワンスウエド(その父ブラッシンググルーム)
2018年5月17日 テイエムオペラオーが死亡
2000年天皇賞を春秋制覇するなどGⅠを7勝し、顕彰馬に選出され、種牡馬として北海道新冠郡の白馬牧場に繋養されていたテイエムオペラオー号(牡・22歳)は、5月17日(木曜)に心臓麻痺のため死亡しましたので、お知らせいたします。
引用:http://www.jra.go.jp/news/201805/052004.html
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