スタートしてから一度も他馬に先頭を譲らず、そのまま勝ってしまう逃げ馬。
直線を向いてからは追い込みとはまた違った「ハラハラドキドキ」があるのが逃げ馬の宿命です。
逃げ馬の場合、交わされてしまうとズルズル後退し惨敗、という馬も少なくありませんが、だからこそ逃げ切った時の鮮やかさもまた記憶に残ります。
そんな逃げ馬の名馬のランキングです。
第1位 ツインターボ(1991年~1996年)
逃げ馬、というと第二位のサイレンススズカや第三位のミホノブルボンを一位に挙げる方が多いと思いますが個人的には「逃げ馬」で真っ先に思い出すのがこの馬。
驚くべきは成績表を見るとわかるのですが、中央では新馬以来ハナを切らなかったことは一度もないという事です。
しかも圧倒的な逃げ切り(オールカマー5馬身)の時もあれば、逃げつぶれて大敗(有馬記念、5秒差シンガリ)もありと、常にハラハラさせられた馬で、それゆえに多くのファン(私も含め)がいました。
牡馬としてはかなり小さい420キロ台の馬体で、逃げ切る時はまさに「ツインターボ全開」、失速るときは「ツインターボ故障」のような馬でした。
しかも、あの小さな体で地方に転厩して頑張りましたが、さすがに年齢的なものもあってか、初戦に勝った以降は大敗の連続で引退しました。
ベストレースはやはり5馬身差圧勝の1993年オールカマーです。
第2位 サイレンススズカ(1997年~1998年)
逃げ馬、というより、あまりのスピードに他の馬が付いて来れないレースになったという方がいいかもしれません。
新馬を逃げ切り勝ちのあと、出遅れや好位からの競馬もありましたが、明けて5歳(現4歳)のバレンタインSから6連勝すべて逃げ切り。
着差も宝塚記念の3/4馬身が最低であとはほぼ圧勝。
7連勝をかけて迎えた天皇賞(秋)は、この馬が出走するからかどうかはわかりませんが珍しく12頭の小頭数でした。
4コーナーまで圧倒的なスピードで先頭で通過したサイレンススズカでしたが、悲運にも突然故障発生。
左前脚の手根骨粉砕骨折という重症で予後不良となり、あっけなく競争生活に別れを告げました。
この馬のレースをもっと見たかったというファンは私だけではないと思います。
ベストレースは1998年の金鯱賞、重賞で2着に1.8秒の大差をつけたレースにします。
こちらの記事もご覧ください。
永遠の疾風!サイレンススズカの魅力とは?悲劇のレース天皇賞秋
第3位 ミホノブルボン(1991年~1992年)
オグリキャップのように血統的にはかなりマイナーな配合なのですが、故戸山調教師に鍛えに鍛えられて大成した馬だったと思います。
新馬戦こそ追い込んでますが、4戦目のスプリングSからハナを切るレースを見せ、2着に7馬身差の圧勝。
続く皐月賞・ダービーも逃げて圧勝と、まさに「強い」の一言。
しかもダービーまで無敗の6連勝を達成しました。
秋初戦の京都新聞杯も逃げ切り勝ちし、血統的に距離不安を囁かれた菊花賞に臨みましたが、最後の最後で宿敵ライスシャワーに交わされ初めての敗戦を喫しました。
その後、何度も故障や疾病に泣かされ、必死に現役復帰を目指しましたが、1994年に正式に引退しました。
この馬のベストレースはやはり1992年ダービーでしょうか。
こちらの記事もご覧ください。
栗毛の超特急!ミホノブルボンの競走馬人生と種牡馬生活を終えた現在
第4位 メジロパーマー(1989年~1994年)
メジロマックイーンやメジロライアンと同期ですが、クラシックとは無縁でした。
4歳(現3歳)時には一度も勝てず、5歳(現4歳)の夏に500万~札幌記念と連勝した頃から逃げ馬としての資質を見せ始めます。
ところが、秋の京都大賞典に負けたあと、なんと障害に出走してきました。
初戦を勝ち、これから障害の一流馬になるのかなあと思いきや、障害は2戦のみで再び平地へ。
そしてこの馬の真骨頂が6歳(現5歳)時。
新潟大賞典を7番人気ながら4馬身差で圧勝して、続く宝塚記念も9番人気ながら見事に逃げ切って初GⅠ制覇。
秋初戦の京都大賞典と次の天皇賞(秋)は逃げつぶれて惨敗して、有馬記念では完全に宝塚記念に勝ちをフロック視されたかのような16頭中15番人気でしたが、またも逃げ切りで春秋のグランプリ制覇となりました。
また、山田泰誠騎手との相性が良かったことも印象に残ります。
とにかく自分のペースで4コーナーまで行ければ強さを発揮できた馬だと思います。
ベストレースは1992年の有馬記念です。
第5位 アイネスフウジン(1989年~1990年)
この馬も上記メジロパーマーと同期で、メジロライアンとクラシックを戦いました。
もともとバリバリの逃げ馬ではありませんでしたが、4歳(現3歳)の共同通信杯で逃げ切ってから、スタイルが確立します。
不良馬場の弥生賞はメジロライアンに敗れましたが、続く皐月賞は4角先頭から懸命に粘りこみ、ハクタイセイのクビ差2着。
そして3番人気で迎えたダービーを見事に逃げ切りました。
この時の東京競馬場の入場者数196.517人は未だに記録として残っており、ウイニングランで巻き起こった「ナカノコール」は騎手へのコールの走りと言われています。
残念ながらこのダービーが最後のレースになってしまいましたが、この馬のベストレースでもあると思います。
第6位 プリティキャスト(1977年~1980年)
実際にこの馬のレースを見たことはありませんが、多くの年配の方が「逃げ馬」というとこの馬を挙げます。
通算41戦8勝と、立派な成績を残していますが、タイプとしてはツインターボやメジロパーマーのような「圧勝か惨敗か」のタイプだったようです。
その「圧勝」の最たるものが1980年の天皇賞(秋)でしょう。
当時はまだ天皇賞(秋)も距離が3200mだった時代で、牝馬ながら大逃げを打って7馬身差の圧勝劇。
2周目の向正面では2番手を100m離していたとも云われる大逃げでした。
ベストレースはその1980年天皇賞(秋)です。
第7位 セイウンスカイ(1998年~2001年)
2000m以上の距離を、常に前半35秒台のペースで行ける馬でしたので、ハナを切る形が多かったですが、2.3番手からでも競馬のできた馬です。
皐月賞は2番手から4角先頭でそのまま押し切り勝ち。
続くダービーは4コーナーまで2番手のまま直線を迎えましたが、スペシャルウィークの圧勝の前に4着。
人気薄2頭にも交わされました。
しかし菊花賞ではキッチリとハナを切り、直線追い込んできたスペシャルウィークに31/2の差をつけて勝ちました。
芦毛の強い逃げ馬というのもあまり記憶にありませんので、今でも印象が強いです。
ベストレースはやはり1998年の菊花賞でしょう。
第8位 サニーブライアン(1996年~1997年)
皐月賞・ダービーの2冠馬ですが、とくにこの2レースに強い印象のある馬です。
新馬を逃げ切って勝ったあと、500万を勝つのに手間取り、1月のジュニアCで再び逃げ切りオープン入り。
その後弥生賞3着で皐月賞の権利を取るも、若葉Sに出走して4着と敗れ、皐月賞は11番人気でした。
その皐月賞は序盤こそハナを叩かれましたが、途中から先頭に立ち、追い込んできたシルクライトニングをクビ差抑えて勝ちました。
初重賞制覇がクラシックの皐月賞GⅠというのも珍しいですが、鞍上の大西騎手もなんと今まで重賞(アラブを除く)に勝った事すらない騎手でした。
続くダービーは、まだ本当に強いのかどうかファンの方々も半身半疑だったようで、皐月賞馬としては異例の6番人気。
しかし今度は最初からハナを切り、そのままシルクジャスティスに1馬身を付けて勝利。大西騎手は重賞2勝目がダービーとなりました。
しかし残念なことにレース中に骨折していたことがわかり、休養を余儀なくされ、のちに屈腱炎も発症したため、ダービーが最後のレースになりました。
ベストレースはこの1997年ダービーです。
第9位 タップダンスシチー(2000年~2005年)
デビューが遅く4歳(現3歳)の3月で、2戦目に初勝利を挙げたもののなかなか条件戦を抜け出せず、オープン入りしたのが6歳(現5歳)の3月と、かなりの晩成タイプですが、ここからがこの馬の活躍期に入ります。
また、逃げの先方にでるようになるのも7歳(現6歳)からで、初逃げ切りが京都大賞典で続くジャパンカップで重馬場を味方に9馬身の圧勝で初GⅠを制覇しました。
明けて8歳(現7歳)になっても金鯱賞と宝塚記念を制し、有馬記念でも2着と非常にタフに走りました。
9歳(現8歳)の金鯱賞では59キロを背負い2馬身半の圧勝で金鯱賞2連覇と衰え知らずでしたが、秋のGⅠ3連戦ではいいところなく負け、引退しました。
ベストレースは2003年のジャパンカップです。
第10位 エイシンヒカリ(2014年~)
現役馬ではこれが一番手でしょうか。
デビュー戦こそ好位抜け出しでしたが、2戦目以降はハナを譲らずアイルランドトロフィーまで5連勝。
チャレンジCで失速し9着に負けたものの、次の都大路Sから毎日王冠まで逃げ切り3連勝。
天皇賞はクラレントにハナを譲ったためか、4コーナーで先頭に立つも失速しました。
ですが、昨年暮れに香港Cに出走して逃げ切り勝ちしGⅠ初制覇。
今年5月にはフランスのイスパーン賞にも勝ち、強さを見せています。
6月に年内引退が発表され、天皇賞(秋)→香港Cでラストランだそうですが、
華麗な逃げ切りで締めくくってもらいたいですね。
ベストレースは2015年の香港Cです。
まとめ
逃げ馬には明らかに二通りのタイプがいます。
一つはサイレンススズカ・ミホノブルボン・セイウンスカイのように、恐らく逃げなくても強い馬。
もう一つはツインターボ・メジロパーマーのような、恐らくハナを切らないとダメな馬。
どちらも記憶に残る馬ですが、個人的感情としてはツインターボのような馬を応援したくなりますね。
これからも個性あふれる逃げ馬の出現に期待しましょう!
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