競走馬は私たちの前でさまざまな行動や仕草を見せてくれます。はたして、競走馬は人間の感情をどの程度理解しているのでしょうか。また人間はその行動や仕草から、競走馬の感情を読み取ることができるのでしょうか。
今回は、人間が読み取ることのできる馬の感情やそのエピソードについて色々とご紹介します。
耳の動きでわかる競走馬の感情
馬は物の音や動きに対してかなり敏感な動物で、その様子は耳の動きからも感じ取ることができます。耳には多くの筋肉があり、両方の耳を別々に動かすことができます。
両耳が横を向いている状態は一番自然な状態であり、緊張しておらずリラックスしている時にこのようになります。
耳を立てた状態で前に向くことは、目の前にあるものに対して興味を持っていたり、注意をしている時にとる行動です。牧場などで競走馬と向かい合った時にこのような状態になり、目が合っていたりするとこちらに興味や関心を持ってもらっているということです。
耳をバラバラに動かしている時は、警戒心をもっていたり不安に感じていることを表します。競馬場など慣れない環境に身を置いた時、このような状態になることが多くあります。
また、耳を後ろに向けて伏せたような状態だと、怒りなどの不快な気持ちを抱いてることを表します。この行動は一般的には「耳を絞る」と言われており このような感情が強い時は正面から馬の顔を見ると耳が見えなくなるほど伏せた状態になります。
人間と同じように目でも感情がわかる
馬は哺乳類の中で一番大きな目をしていると言われています。 その視野は350度とかなり幅広く、同時に周囲のあらゆる状況を読み取ることができます。
そして、人間と同じように気分の良い時や喜んでいる時は目を細めますし、機嫌の悪い時は目をつりあげた表情になります。
人間の感情を理解している?
馬が人間の感情を理解しているのではないかというエピソードは数多くありますが、果たして本当のところはどこまで理解しているか疑問に思う方もいるでしょう。
イギリスの大学が同じ人の笑った顔と怒った顔の写真を見せる実験を行ったところ、怒った顔の写真を見た時は心拍数が上がり周囲をしきりに確認するなど、ストレスを感じる行動を取ったそうです。
対して笑った顔の写真を見せた時はその反応があまりなかったため、馬は人間の感情を読み取れるのではないかという結果になったそうです。
また、馬は人間の声色でも感情を読み取ることができます。調教やレースの時にスピードアップするタイミングで毎回同じ掛け声をかけていると、その合図を馬が覚え、ムチを入れなくても声だけで勝負どころで反応する馬もたくさんいます。
このことから今はあらゆる情報を理解し、人間の感情も読み取ることができるということがわかります。
競走馬が感情を表したエピソードまとめ
シンボリルドルフ
感情を表したエピソードとして、有名なのはやはりシンボリルドルフでしょう。天皇賞(秋)でギャロップダイナの2着に敗れ、馬房に戻ってきた際は静かに涙を流したと言われています。
また、一番人気で迎えた日本ダービーの時は、向正面から岡部騎手がゴーサインを出しますが、それにまったく反応せずファンは騒然としましたが、最後の直線に入るとみずからハミを取り前を行く馬を交わし、見事にクラシック二冠目を制します。
このことに対して岡部騎手は「自分よりシンボリルドルフの方が仕掛けどころ分かっていた。彼に競馬を教えてもらった」と、レース後に語っていました。
涙に関しては「たまたまだ」という声もあり、この事実は賛否両論分かれますが、日本ダービーの出来事から考えれば、シンボリルドルフという名馬は競馬のことも人間の感情もよく理解していたと解釈してもおかしくはないでしょう。
参考:史上初の7冠馬シンボリルドルフの血統と岡部騎手、天皇賞で皇帝が見せた涙
オグリキャップ
競馬に興味がない人でも名前だけは聞いたことあるであろうオグリキャップですが、普段はおとなしくて手のかからない本当に賢い馬だったそうです。ただ、その中でイタズラ好きの一面があったようで、人がオグリキャップと一緒に写真を撮ろうとして横に並びポーズを構えると、シャッターを押す瞬間に着ている服の袖をくわえるいたずらをよくしていたそうです。
その後のオグリキャップの顔を見ると堂々とした顔で笑っているように見えたという人多くいたそうなので、 賢いいたずらっ子だったという印象を受けます。
参考:オグリキャップと伝説のラストラン有馬記念、主な産駒一覧と成績
キーストン
1964年の日本ダービーを勝ったキーストンは、レースで負けたあと関係者が落ち込んでいる姿を見て自分も落ち込んでしまったそうです。さらに、エサを食べなくなり大きく馬体重を減らしてしまったそうです。
そして、この馬の最後のレースとなってしまった阪神大賞典では、自身は予後不良になり安楽死処分が取られるほどの大怪我をしていたにもかかわらず、落馬して一時的に意識を失っていた山本騎手に近づき、鼻をすり寄せて心配する素振りを見せていたことも有名です。
ペインテドブラック
GⅡを2勝して日本ダービーでも5番人気(7着)に支持された、ペインテドブラックも非常に印象的な馬でした。
馬は本来、集団生活をする習性がある動物なので、それが強く残っていると、周りに馬がいないと極端に寂しがったり、不安を感じたりすることがあります。ペインテドブラックはその典型例で、 厩舎でも牧場でも一頭だけにされると寂しがってずっと鳴いていたそうです。
調教をしていても前に馬がいるとものすごいスピードで追いつき、競走馬としての高い能力を感じることができたそうですが、馬に並んでしまうと乗り役がどれだけ追い抜かすように促しても走ってくれなかったそうです。
実際、4勝中3勝がハナ差かクビ差での勝利だったので、レースでもこの習性が色濃く出ていたことが分かります。ただ、ステイヤーズステークスではテイエムオペラオーを負かしているだけに、能力が相当高かったことは間違いありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は競走馬は人の感情を理解しているのか、人は競走馬の感情を受け取ることができるのかということ、またその感情が表されている面白いエピソードをご紹介しました。
このような感情の受け取り方や、競走馬のエピソード覚えておくと実際に競馬を見ている時に馬の気持ちをより強く受け取れるようになり、馬券の的中する可能性もアップするかもしれませんよ。
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