ヴィルシーナ
出典:wikipedia
昨今は女性の時代、とても女性の強い時代になっています。
それはなにも人間の世界だけの話ではありません。
動物界、競馬界もまた例外ではありません。
史上4頭目の三冠牝馬であるとともに史上最強牝馬の呼び声高いジェンティルドンナ。
そして同じ年に産まれそんな最強牝馬に挑み続けたヴィルシーナ。
このヴィルシーナもジェンティルドンナと言う怪物馬とバッティングしていなければ、三冠牝馬として後世に語り継がれていたかもしれません。
この2頭の強い女の戦いにスポットを当てたいと思います。
怪物を倒した怪物ジェンティルドンナ
ジャパンカップ ジェンティルドンナ
出典:wikipedia
ジェンティルドンナは2009年2月20日父ディープインパクト母ドナブリーニのもとに産まれます。
後の三冠牝馬も最初から順風満帆ではありませんでした。
京都競馬場での芝1600メートル新馬戦でM.デムーロ騎手を鞍上に迎え初戦は2着に敗れます。
続く阪神競馬場での芝1600メートル未勝利戦では、鞍上にI.メンディザバル騎手で2着に3馬身差という圧巻の走りでようやく勝利します。
未勝利戦勝利後は数々の名馬を輩出した京都競馬場での芝1600メートル・シンザン記念にて鞍上C.ルメールで、牝馬としては13年ぶりの優勝という快挙を達成し着々と最強牝馬への階段を登りはじめるのです。
さて史上4頭目の三冠牝馬ジェンティルドンナのクラシック三冠への桜花賞、オークス、秋華賞については後述するとして、ここでは彼女のキャリアで最強であることをさらに印象付けたレースについて記述します。
そのレースとは三冠獲得後初の歴戦の古馬との闘いとなる日本最高峰のレースであるジャパンカップです。
このレースは言わずと知れた国内外の強豪馬が東京競馬場に集結し芝2400メートル戦で行われます。
このレースでは28年ぶり2例目となる三冠馬対決が実現するとして大きな注目を集めるのです。
3歳最強怪物牝馬と4歳で前年牡馬クラシック3冠馬怪物オルフェーヴルとの対決を軸に闘いの火蓋が切って落とされます。
ジェンティルドンナは鞍上岩田康誠騎手対するオルフェーヴルは鞍上池添謙一騎手。
レース序盤からビートブラックがお得意の逃げでレースを引っ張りますが、直線に至ると怪物二頭の独壇場になり壮絶な叩きあいの末にハナ差での勝ち負けとなり軍配が上がったのはジェンティルドンナでした。
あの怪物オルフェーヴルに勝利し名実ともに最強牝馬としてジェンティルドンナの名をこのレースとともに伝説として人々の記憶されていくのです。
怪物に挑み続けた不屈の名馬ヴィルシーナ
ヴィルシーナは父ディープインパクト母ハルワースィートの間に2009年3月5日に産まれます。
後の永遠のライバルであり壁でもあるジェンティルドンナとは対照的に、札幌競馬場での芝1800メートルの新馬戦を鞍上福永祐一騎手で2着に1馬身と4分の1差で勝利し順調に発進します。
その後もエリカ賞、クィーンカップなど次々と勝利重ねて行きます。
ここまでは順調にキャリアを重ねて行きますが、牝馬クラシックへの進路にあの怪物ジェンティルドンナが立ちはだかるのです。
この二頭の関係を見る上でいかにジェンティルドンナに苦しめられたかを物語るためデータを紐解くと、この2頭は過去に8度の対戦がありそのうちジェンティルドンナに軍配が上がったのが7度、対するヴィルシーナはというと、2014年の宝塚記念で9着のジェンティルドンナを3着のヴィルシーナが着順で上回ることただ1度になっています。
そしてそのうちこの2頭で勝敗を分けたレースが5度あり、いずれも2着のヴィルシーナがジェンティルドンナの後塵を拝む形となっています。
生涯成績21戦5勝とずば抜けた成績ではありませんが、表の数字ではなく内容を見てみるとこの馬の功績が分かると思います。
勝鞍こそ5つに留まっていますが、G1レースでの2着が4回うち3回がジェンティルドンナに破れています。
上記のように不動の存在であるジェンティルドンナに頭を押さえ続けられなかなか勝ち星に恵まれませんでしたが、不屈の闘志で2013、2014年のビクトリアマイルを連覇してG1レースで2勝を挙げています。
この2勝はいずれもジェンティルドンナとの対決ではありませんでしたが、上記のジェンティルドンナとの関係などの不可抗力を踏まえて考えてみるとヴィルシーナは並みの馬ではないことが十分に証明出来るのではないでしょうか?
強い女の対決クラシック争奪戦
後に因縁の相手、好敵手なるこの2頭が初めて顔を合わせるのが3歳クラシック第1戦桜花賞です。
その桜花賞は2012年4月8日阪神競馬場芝1600メートル戦で行われ3歳世代の女王への1冠をかけての闘いが幕を明けるのです。
2番人気ジェンティルドンナは鞍上岩田康誠騎手対する4番人気ヴィルシーナは鞍上内田博幸騎手でレースに臨みます。
ヴィルシーナはスタートから先行し道中先団につけ、最後の直線でアイムユアーズとの叩きあいになるのですが、それを嘲笑うかのように後方からジェンティルドンナが一気に抜き去り半馬身差でジェンティルドンナに軍配が上がります。
続く3歳クラシック第2戦オークスは東京競馬場芝2400メートルに舞台を移し5月20日開催されます。
鞍上は内田博幸で2番人気ヴィルシーナは推され、それに対するジェンティルドンナは鞍上川田優雅3番人気でレースを迎え、ヴィルシーナは好スタートを切り道中は中団で控えました。
最後の直線でヴィルシーナ、ジェンティルドンナを含む数頭が壮絶な先頭争い演じますが、ゴール手前で一気にジェンティルドンナが抜け出し5馬身差の圧勝でヴィルシーナを下して見事2冠目を獲得しました。
この闘いでジェンティルドンナが力の違いを見せつける形になり、あらためて彼女の強さを思い知らせる事となりその実力は不動のものになりつつあったのです。
そして3クラシック最後の闘いを10月14日の京都競馬場芝2000メートル戦で2頭とも鞍上は前回と同じ、1番人気ジェンティルドンナ、2番人気ヴィルシーナでレースを迎えます。
三冠目が欲しいジェンティルドンナ、そして前回の完敗もありなんとしても一矢報いたいヴィルシーナとの女の負けられない闘いが始まるのです。
スタートからヴィルシーナは押し出し先頭に立ちますが、向こう正面でチェリーメドゥーサに先頭を譲りそれに続く形になり、直線に入ってもチェリーメドゥーサが先頭で走り続けそれを追いかけるヴィルシーナ、そしてどんどん追い上げてくるジェンティルドンナがいました。
その2頭が残り数十メートルのところでようやくチェリーメドゥーサを捉えて、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナの2頭による叩きあいになり、壮絶な女の闘いの末ほぼ同時にゴールしました。
判定の結果、ジェンティルドンナがハナ差でヴィルシーナを下して三冠女王に輝いたのです。
結果ジェンティルドンナは三冠牝馬の地位を不動のものとしました。
ヴィルシーナも、最後は意地を見せての2着に終わりました。
3歳クラシックすべてジェンティルドンナに土をつけられましたが、クラシック争奪戦での絶対女王のジェンティルドンナをここまで追い込んだのはヴィルシーナ以外にいないのですから、ヴィルシーナの実力、不屈の闘志を評価しなければなりません。
まとめ
ここまで女王ジェンティルドンナ、そしてミス銀メダルヴィルシーナのこの2頭の天才と秀才の女の闘いについて記述してきました。
最初にもしジェンティルとヴィルシーナの世代が違っていればヴィルシーナは3冠馬になりえたかもしれないとも言いました。
しかしこの記事を書きすすめるうちに、どちらかが欠けていたら現在の両馬の活躍は無かったのかもしれないと思うようにもなりました。
ヴィルシーナはのちにG1レースを2つ勝利し、ジェンティルドンナに至っては海外も含めG1レース7勝を誇る偉大な記録を保持しています。
しかし、3歳当時のクラシック争奪戦での両馬のライバル関係がお互いを強くして後の記録へと繋がって行ったのかもしれません。
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