セイウンスカイ-アロースタッドの牧場見学時に撮影。
By dora1977 - 投稿者自身による作品 (本人撮影), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4658681
【皐月賞】強敵キングヘイローとスペシャルウィークを完封し、一冠目を獲得
地味な血統ながらデビューから圧勝で2連勝し、弥生賞でもスペシャルウィーク相手に僅差の2着と好走し、3着だったキングヘイローと併せて『牡馬クラシック3強』と称された中、それまでソエの影響で調整が順調ではなかったセイウンスカイが初めて順調に調整されて迎えたのがこの皐月賞でした。
スペシャルウィークが単勝1.8倍の圧倒的人気に推される中、横山典騎手に乗り替わったセイウンスカイは終始2番手から前を伺う積極的なレース運びを見せ、4コーナー手前で先頭に躍り出ると直線もしっかりした脚色で伸びてキングヘイローとスペシャルウィークの猛追を抑え切って、一冠目を制しました。
スペシャルウィークが大外枠であったこと、馬場の内側にグリーンベルトがあったことを踏まえても、まさに自らの力で掴み取ったタイトルであったと言えるでしょう。
【京都大賞典】凄まじい大逃げ!古馬への果敢な挑戦
ダービー4着後、夏を生まれ故郷の西山牧場で過ごしたセイウンスカイは、秋の初戦に古馬との対戦となる京都大賞典を選択しました。
当時菊花賞を目指す馬の王道路線のステップレースは京都新聞杯(もしくは神戸新聞杯)でしたが、セイウンスカイは元々ゲート入りに不安を抱える馬で、もし京都新聞杯に出走してゲート再審査になった場合、日程的に菊花賞への参戦が不可能になることを考慮して京都大賞典に出走することとなりました。
このレースには少頭数ながら天皇賞・春を制したメジロブライトと、前年の有馬記念を制したシルクジャスティスのGⅠ馬2頭に加えて、GⅠでも好走歴のあるステイゴールドやローゼンカバリ―なども出走しており、皐月賞馬ながらセイウンスカイは7頭立ての4番人気とそれほど評価は高くありませんでした。
しかし、レースでは好スタートから積極的に先手を奪うとそのまま大逃げの形に持ち込み、4コーナーで一旦後続を引き付けて直線再び伸びるといったセンスのある内容でメジロブライトをクビ差抑えて優勝しました。
この逃げの完成形が次の菊花賞に繋がるといった意味でも、セイウンスカイにとっては大きな転機となるレースだったのではないでしょうか。
【菊花賞・動画】二冠達成!芸術的な逃げの完成形
前哨戦の京都新聞杯を制したダービー馬スペシャルウィークが単勝1.5倍の圧倒的1番人気に推される中、4.3倍の2番人気で菊花賞を迎えたセイウンスカイはまさに『芸術的逃げ』とも言える素晴らしいレースを見せることになりました。
3000mの長丁場のレースながら好スタートから押して先頭に立つと、そのまま最初の1000mを59秒6という明らかにオーバーペースとも言える速さで大逃げの形に持ち込みながら、次の1000mを64秒3でペースを落としてしっかり息を入れ、2週目の4コーナー手前の坂を利用して一気にスパートするとそのまま大きなセーフティリードを奪い、最後の1000mを最初の1000mよりも速い59秒3で駆け抜け、当時の世界レコードであった3分3秒2の驚異的なタイムで圧勝し見事に2冠を達成しました。
大本命馬であったスペシャルウィークが後方に控える展開や、プレッシャーを掛けられることなく楽に逃げられた展開面での恩恵があったのも確かでしょうが、道中騎手の指示に意のままに動けるレースセンスと、セイウンスカイ自身の強靭な精神力があったからこその逃げ切りであったことは間違いなく、セイウンスカイ自身のキャリアにおいて最高のレースであったのではないでしょうか。
【天皇賞・春】二強再度激突!
1番人気で迎えた有馬記念で同期のグラスワンダー相手に4着に敗れ、再び西山牧場で英気を養ったセイウンスカイは上半期の最大目標を天皇賞・春に置き、前哨戦として出走した日経賞では余裕残しの仕上げに加えて好位からのレースとなりましたが、直線早め先頭からあっという間に後続を突き放して5馬身差の快勝を飾り、万全の状態で天皇賞・春を迎えました。
ここでは5度目の対決となるスペシャルウィークに加えて、昨年の覇者メジロブライトも加えて3強対決となっていましたが、菊花賞で為すすべもなくセイウンスカイに逃げ切られたスペシャルウィーク陣営にとっては、ここは絶対に負けられない戦いとなっていました。
スタート直後は好位に控える競馬をしていたセイウンスカイですが、1週目のゴール板を過ぎたあたりで先頭に立つとそのままレースを引っ張りました。
しかし、菊花賞と同じ轍を踏めないスペシャルウィークが2週目の向こう正面から徹底的にセイウンスカイにプレッシャーを掛けながら追走し、直線に入っての叩き合いでこれを競り落とすと後方から伸びてきたメジロブライトも抑え込み、見事に菊花賞の雪辱を果たすことに成功しました。
このレースでは完敗に終わったセイウンスカイですが、奇策に出ずにスペシャルウィーク相手に正攻法の堂々としたレースで受けて立ったのは、前年の2冠馬の名に恥じない素晴らしい走りであったと思います。
【札幌記念】新境地の開拓
天皇賞・春で3着に敗れた後宝塚記念を回避したセイウンスカイは、天皇賞・秋のステップレースとして札幌記念に出走してきました。
ここには同期の2冠牝馬ファレノプシスも参戦しており大きな盛り上がりを見せましたが、このレースで見せたセイウンスカイのレースはファンの想像を超える驚くべき内容でした。
これまで逃げ、もしくは先行と前々でのレースしかしてこなかったセイウンスカイですが、スタート後それほど行く気を見せなかったこともあってか横山典騎手はそのまま後方に控える戦法を取り、ファンからは大きなどよめきが上がりました。
しかし、気分良さそうにレースを進めていたセイウンスカイは3コーナーから一気にマクリ気味に進出すると、直線同じく後方から追い込んで来たファレノプシスを半馬身差抑えて見事に復活の勝利を飾りました。
レース後横山典騎手は『馬の行く気に任せただけ』と飄々と語りましたが、このような脚質転換をアッサリ行うことができる横山典騎手の技術と、それに対応できるだけの精神力を持ったセイウンスカイの能力があったからこそ成立した素晴らしいレースだったと言えるでしょう。
セイウンスカイ産駒について
2002年に引退し、アロースタッドで種牡馬生活をスタートすることになったセイウンスカイですが、血統的な評価の低さに加えて、スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー、キングヘイローといった血統背景も一流の同期がほぼ同時に種牡馬入りしたこともあり、種付頭数が圧倒的に少なく非常に他馬と比べて不利な状態でした。
しかし、数少ない産駒の中から中央競馬初勝利を挙げた同じ芦毛産駒のニシノプライドが、その後オープンクラスまで出世したことで、種付頭数は大きく増えることはなかったものの種牡馬生活を続けられることになりました。
ニシノプライドの活躍の背景にセイウンスカイの『反骨精神』や『負けん気の強さ』が見え隠れしたのは決して自分だけではないと思います。
セイウンスカイの種牡馬生活と死因
種牡馬生活を送っていたセイウンスカイでしたが、2011年の8月16日に馬房で立ち上がって転倒し、その際に頭を強く打って死亡しました。
享年16歳でした。
公式的な死因は心臓発作と発表されていますが、馬房の扉に取り付けられた鉄格子が外れ暴れた形跡があったことから、もしかしたら何かに興奮したか、もしくは苦しんで暴れたのが直接的な死因になったのかもしれません。
非常に個性的な馬でファンも多かっただけに、種牡馬生活が終わった後にせめて功労場として悠々自適な生活をさせてやりたかったオーナーの落胆も大きかったでしょうし、自分個人もとても悲しい気持ちになったことを今でも思い出す辛い出来事の一つでした。
まとめ
1995年生まれの98年クラシック世代は今でも『最強世代』と呼ばれ、その中でもセイウンスカイは間違いなくトップクラスの1頭だったと言えるでしょう。
血統的背景は地味ながら、叩き上げのセイウンスカイが一流血統のエリートを相手に2冠を勝ち取ったのは非常に痛快で、まさに『雑草魂』という言葉がピッタリな歴史的名馬の1頭であるのは間違いないと思います。
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