カリフォルニアクローム
出典:wikipedia
日本人にとって、世界最高峰のレースとも呼ばれる凱旋門賞制覇は、ホースマンにとってもファンにとっても、日本競馬の世界では「夢」に位置付けられており、その夢がいつかなっても不思議ではないくらい、日本の競馬のレベルは上昇してきつつあります。
その一方で、世界の競馬が実際にたどっている方向性という意味では、そもそも凱旋門賞からして、今年2016年の勝ち時計が実に2分23秒台という、仮に東京競馬場で行われたとしても十分に速い部類に入る時計で決着したことを考えても、どうも近年は従来の欧州競馬に見られた「我慢比べ」、「スタミナ比べ」のスタンスから、「スピード比べ」、「パワー比べ」のイメージが強くなってきている印象があります。
つまり、日本のみならず、本場ヨーロッパでもすでにアメリカ競馬寄りにシフトしつつある印象を受けます。
かつて野平祐二、藤沢和雄、岡部幸雄の「チーム・シンボリルドルフ」が挑んだのも、ヨーロッパではなくアメリカでした。
アメリカ競馬といえば、やはり北米三冠レースをはじめ、ダート競馬の本場というイメージがあります。
ダートの本場アメリカで誕生した名馬は数多くいます。
世界の血統図を自分色一色に塗り替えてしまったノーザンダンサーをはじめ、芦毛の系譜が今なお残るネイティヴダンサー、ネイティヴダンサー系大成功の功績者であるミスタープロスペクターとその子孫(キングマンボら多数)の血が、今間違いなく世界の主流です。
今回はそんなアメリカ競馬にもスポットを当ててみたいと思います。
とにかく近年は歴代の名馬をしのぐような名馬が続々誕生(ゼニヤッタ、レイチェルアレクサンドラの最強牝馬2騎、久々の北米三冠馬アメリカンファラオなど)している印象がある中で、こちらも素晴らしい戦績を残している現役馬・カリフォルニアクローム(牡5歳・2016年現在)について、今回はご紹介しましょう。
アメリカンファラオよりも強い!?カリフォルニアクロームの血統背景
2015年は、あのアファームド以来37年ぶりに北米三冠を達成したアメリカンファラオの登場で盛り上がり、今年2016年は、日本馬ラニ(父タピット)が北米三冠レースすべてにチャレンジし、しかも走るたびに着順を上げてラストのベルモントSでは馬券に絡む活躍を見せたことは記憶に新しいところでしょう。
ただ、これからお話するカリフォルニアクロームも、戦った相手関係を考えると、もしかしたらアメリカンファラオよりも強いのではないかとの声が未だ鳴りやまない名馬です。
それではさっそくご紹介しましょう。
父プルピットは日本でも今ではすっかりおなじみの種牡馬ですね。
というか、今まさに旬という印象さえあります。
前述したラニの父タピットもプルピット産駒でしたし、今日本ではもしかしたら将来とてつもない名馬へと成長する可能性を秘めた牝馬ミスエルテ(父フランケル)の母の父として、プルピットの名を見ることができます。
もちろんプルピット産駒の日本馬は、主にダートで活躍する現役馬が多く、しかし芝でも対応できるスピードを兼ね備えている印象があり、やっぱりアメリカの血がしたたかであることを再認識させられます。
プルピット自身はシアトルスルー(日本ではタイキブリザードらの父として活躍)の系統ですが、母方にやっぱりミスタープロスペクターの血が入っていますので、これはもう完全にアメリカ血統という印象の血統背景にあります。
カリフォルニアクロームの母ラヴザチェイスの父ノットフォラヴはミスタープロスペクター直仔ということで、カリフォルニアクロームはミスタープロスペクター4×3のインブリードを持つという血統的特徴があります。
そして、ノットフォラヴ自身はノーザンダンサーの血を持っており、カリフォルニアクロームの祖母チェイシトダウンもダンチヒの血を継いでいますので、こちらもノーザンダンサーの系統になります。
つまり、カリフォルニアクロームはミスタープロスペクターの4×3、ノーザンダンサーの4×5(母系)、ネイティヴダンサーの7×5×7という、なんとなく日本人好みの配合といえるかもしれません。
アメリカ血統だけに牝系はそこまで目立ってはいませんが、活力ある父系を力任せに掛け合わせていく手法は、いかにもアメリカらしいな、という気がしないでもありません。
2016年11月時点の戦績・主な勝ち鞍
カリフォルニアクロームは2016年11月24日現在で、25戦15勝という成績を残しています。
アメリカの5歳牡馬としては、そこまで豊富なキャリアとは言えないかもしれませんが、実はこのカリフォルニアクロームは、昨年2015年は故障によりほぼ1年を棒にふってしまうシーズンに終わっていました。
主な勝ち鞍には、2014年の北米2冠(ケンタッキーダービー、プリークネスS)、芝のハリウッドダービー、そしていよいよ本格化した今年2016年は、ドバイWC、パシフィッククラシックSでともに大勝し、名実ともに世界最強の1頭に名乗りを挙げることに成功しました。
そして先日のBCクラシックでは、芦毛のアロゲートの前に2着に敗れていました。
しかし2016年はG1級レース3勝を含め7戦6勝という驚愕の戦績を残しました。
2014年にはすでにエクリプス賞(ヨーロッパでいうカルティエ賞、日本でいうJRA賞)の年度代表馬に続き、今年もおそらく何らかの賞を受賞することになると思われます。
カリフォルニアクロームの今後の展望と引退プラン
アメリカンファラオはすでに引退し、種牡馬としての活躍がスタートしています。
カリフォルニアクロームも実はすでに引退が決まっており、2017年に1~2走して引退、種牡馬入りというプランがすでに発表されています。
もちろん戦績は文句なし、アメリカンファラオのような安定感はありませんが、勝ったレースのインパクトはかなりのものがあったカリフォルニアクロームは、そのパフォーマンスという意味でもまったく文句のつけようのない名馬であるとはいえるでしょう。
しかし、カリフォルニアクロームには、実はもう1つ大きな勲章を手にするチャンスが残されているのです。
それは、「獲得賞金額世界最高」という、日本馬以外ではなかなか手にするチャンスがない、栄誉ある勲章です。
ご存知のとおり、GⅠ以外のレースも高額賞金である日本にくらべると、海外で日本の名馬並みに賞金を獲得することは容易ではありません。
しかしカリフォルニアクロームには、まだそのチャンスが残されているのです。
ちなみに現段階で世界賞金獲得第1位は何かというと、実は日本が誇る最強の三冠馬・オルフェーヴルが、2位ジェンティルドンナを5000万円ほどしのいで世界の頂点に立っているのです。
「暴君」だとか「茶髪の悪ガキ」などとも呼ばれたオルフェーヴルですが、そういう意味では非常に「優等生」であり、日本ではじめて獲得賞金が10億円を超えたことが話題になったメジロマックイーンの孫らしいな、という気もします。
問題は、カリフォルニアクロームがこれにどこまで迫れるか、あるいはオルフェーヴルを超えることができるのか、この点に注目が集まります。
ただ、「オルフェ超え」が現実味を帯びるはずだった先日のBCクラシックを2着に敗れたことにより、このままいくとカリフォルニアクロームの「オルフェ超え」は少々厳しくなったといわざるを得ません。
もし引退を少し先延ばしにしてドバイWCを優勝すれば文句なしに「オルフェ超え」が決まりますが、やはりもっと大きなお金が動くはずの「種牡馬」という大仕事が待っているだけに、無理はできないでしょう。