キタサンブラック(第76回菊花賞本馬場入場)
出典:wikipedia
2017年12月24日、年末の一大イベント、グランプリ有馬記念を逃げ切り勝ちし有終の美を飾ったキタサンブラック。
そのレースぶりから、引退は早いのではないか、来年も走ったら勝てそう、海外に挑戦してほしいなどの声が多く聞こえてきたのも事実です。
そこで、ここでは惜しまれつつ引退することになった理由や血統面から見る引退後の種牡馬としての展望などをご紹介していきます。
北島三郎オーナーの引き際の美学
キタサンブラックの馬主は数々の報道などで知らない人はいないと思いますが、歌手の北島三郎オーナーです。
ちなみに公式には有限会社大野商事が馬主欄に記載されていますが、代表者が北島三郎オーナーなので、実質、北島三郎オーナーとして報道されています。
馬主としてのキャリアは長く既に50年以上の北島オーナーですが、これまで重賞ウィナーとなった馬は2001年にGⅡニュージーランドトロフィーを制したキタサンチャンネルやその妹で2001年GⅢファンタジーステークスを勝ったキタサンヒボタンのみでした。
そんな北島オーナーがついに出会った名馬がキタサンブラックでした。
待ちに待った名馬との出会いであったこともあり、キタサンブラックの引退に関しては早い時期から色々と考えていたようです。
当初は2017年での引退を考えていたものの、今年の春に大阪杯、天皇賞(春)とGⅠを連続して勝利した際には2018年の現役続行や海外挑戦も視野に入れたことを明言していました。
しかし、上半期を締めくくるグランプリ宝塚記念で9着に敗退したことで海外挑戦が白紙となり、最終的に秋には当初の予定通り2017年限りでの引退が正式に発表されることとなりました。
未勝利や未出走で引退せざるを得ない馬は別として、どんなに強い馬であっても、いつまで競走馬生活を続けるのかの最終判断をするのは馬主です。
今回のキタサンブラック引退は、人生のあらゆる場面で引き際を大事にしてきた北島オーナーらしい判断といえます。
年末恒例のNHK紅白歌合戦は50回の出場記録を達成し卒業、座長公演も惜しまれつつ勇退をしたことからもその一端が垣間見えます。
無様な姿を見せることなく、花があるうち、いい時に、新しいいい道を決めてあげたいという思いが最後の決め手となったそうです。
キタサンブラックの血統(父:ブラックタイド、母:シュガーハート)
キタサンブラックは父はブラックタイド、母はシュガーハートという血統です。
ブラックタイドは2012年以降リーディングサイアーとなっているディープインパクトの兄で、競走馬時代には2004年に皐月賞トライアルGⅡスプリングステークスを勝利するなど22戦3勝の成績を残しています。
種牡馬としては、キタサンブラックの貢献もあり2016年・2017年とリーディングサイアー10位につけていて、キタサンブラック以外にも次の重賞ウィナーが代表産駒としてあげられます。
マイネルフロスト 2014年 GⅢ毎日杯 通算33戦4勝(現役)
テイエムイナズマ 2012年 GⅡデイリー杯2歳ステークス 通算39戦5勝(現役)
タガノエスプレッソ 2014年 GⅡデイリー杯2歳ステークス 通算21戦4勝(現役)
ライジングリーズン 2017年 GⅢフェアリーステークス 通算 7戦3勝(現役)
※通算成績は2017年12月31日現在
シュガーハートは競走馬としては未出走ですが、これまでに産駒として6頭が生まれていて、全弟であるシュガーハートの2017は武豊騎手の弟で2017年まで騎手でもあり2018年に新規開業する栗東・武幸四郎厩舎に預けられることが決まっています。
種牡馬としての展望
北島オーナーもインタビューなどで答えているとおり、北海道の牧場で色んな人が目にしたけれども誰も買わなかった馬に何か引っかかるものを感じ購入したのがキタサンブラックで、裏を返せば血統的には強調材料がなかったと言うことにも繋がります。
2017年のリーディングサイアー上位10頭は次のとおりで、現在の種牡馬界は、サンデーサイレンスを父に持つ種牡馬が中心となっていることが一目瞭然です。
1位 ディープインパクト 父サンデーサイレンス
2位 キングカメハメハ 父キングマンボ
3位 ステイゴールド 父サンデーサイレンス
4位 ハーツクライ 父サンデーサイレンス
5位 ダイワメジャー 父サンデーサイレンス
6位 ハービンジャー 父ダンジリ
7位 クロフネ 父フレンチデピュティ
8位 マンハッタンカフェ 父サンデーサイレンス
9位 ゴールドアリュール 父サンデーサイレンス
10位 ブラックタイド 父サンデーサイレンス
つまり、サンデーサイレンスの血筋のライバルが多く、交配する牝馬との関係からも前途多難な状況が待っているとも言える状況です。
それでも、母シュガーハートの父サクラバクシンオーは短距離を中心に活躍した馬でスピードを出すことができる血統という、キタサンブラックならではの特徴も持ち合わせています。
また、繋養先が社台スタリオンステーションという一流種牡馬が多く在籍している場所に決まったのもプラスに働きそうです。
シンジケート(現役時代の実績などを元にして馬主と生産牧場の双方で決められる種馬としての価値)は総額13億5000万円となり、初年度の種付料は400万円から500万円程度になるのではと推定されています。
ディープインパクトの種付料が来年4000万円であることから考えれば、まだまだ安価といえる初年度あるいは2年目の産駒でどの程度有力馬を輩出できるかどうかが今後の種牡馬としての価値がどうなるかが決まってきそうです。
まとめ
すでに有馬記念勝利後に中山競馬場では引退セレモニーが盛大に行われたキタサンブラック。
年が明けて2018年1月7日(日)の最終レース終了後に数々の名勝負を繰り広げた京都競馬場で改めて引退式が行われることになっていて、その後は社台スタリオンステーションに移動して早速種牡馬生活がスタートすることが予定されています。
2018年も現役を続行して新たなGⅠタイトルを手中に収めるという選択肢もありましたが、レース中の怪我などの万が一の可能性も考えると、花があるうちのこの時期の引退というのが最善の選択肢かもしれません。
馬産地ももちろん大きな期待を持ってキタサンブラックを受け入れますが、競馬ファンとしてもどのような産駒が誕生しターフを駆け抜けていくことになるのかを今から楽しみに待ちたいと思います。
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