レースコメントとしても多くの印象に残るフレーズを残している競馬界のレジェンド、武豊騎手。
近年、武豊騎手をメインとして取り上げたテレビ番組の中でも武豊騎手は数々の名言を残していますが、今回はその中から一つの番組をピックアップしてご紹介していきます。
◎2016年放送NHK武井壮の鉄人列伝「騎手 武豊」◎
2016年4月にNHK総合テレビで放送された番組でしたが、見ていて心に響く含蓄のある名言のオンパレードでした。
「馬の惑星」
武豊騎手が栗東トレーニングセンターを例えた言葉です。
トレセンは馬専用道路が整備されているなど、内部すべてが馬優先に作られていることからこのように評していましたが、正に言い得て妙の表現といえると思います。
「人馬二体」
人馬一体とはよく言われる言葉です。
騎手が馬と一つのからだ・一体になったかのように、巧みに乗りこなすことという意味ですが、武豊騎手はそれはあくまでも人が勝手に言っているだけと言いきります。
人馬二体とは、馬に対する思いやりのことを指していて、人と馬は別々の生き物、馬とは実際の会話ができないからこそ、人には馬と心を通わせる努力がいるということを武豊騎手なりに説明した言葉です。
馬に騎乗する際、いかに馬に負担をかけずに騎乗するのか、馬と呼吸を併せてレース運びをするのかなど、あらゆる場面で武豊騎手のベースとなる哲学・ポリシーのような考え方となっています。
「しっかりせえ。お前、自分を誰やと思っとんねん。オグリキャップやで。」
オグリキャップの引退レースである1990年の有馬記念のレース直前に武豊騎手がオグリキャップに語りかけた言葉です。
馬と心を通わせたエピソードとして番組内では紹介されていましたが、これが人馬二体の代表例と言えます。
この言葉でオグリキャップのプライドが覚醒したのかどうかは定かではありませんが、1990年の秋シーズン天皇賞・秋6着、ジャパンカップ11着と惨敗続きだったオグリキャップは見事に引退レースを勝利で飾ることになりました。
「達成感は全くない」
「達成感は全くない」
「もっと騎乗がうまくなりたい」
「もっと勝負強くなりたい」
「もっと美しいフォームで乗りたい」
「いい騎手になりたい」
第一人者の第一人者たる理由の一端を垣間見る言葉たちですが、これらの言葉はマスコミの取材を受ける際によく武豊騎手は発言しています。
常に謙虚で常に初心を忘れず常に向上心を持ち続けていることがわかります。
「馬70%、人20%、運10%」
よく競馬における重要度を表す言葉として「馬七人三」という言葉がありますが、武豊騎手の場合は多少異なっていました。
馬とは馬の本来持ち合わせる絶対的能力のこと、人は騎手だけではなく調教師・厩務員などすべての人を指します。
運にも騎手は関わるとのことですが、枠順などの各種の要素も影響しているとのことでした。
「馬がほんまに伸びるポイントがある」
どこに乗ると馬が楽かということを常に考えている武豊騎手が福永祐一騎手に語った言葉として紹介されていました。
実際には感覚的であることもあってか具体的には語られていませんでしたが、常に人馬二体と考えている武騎手らしい言葉です。
「あまりプレッシャーにしばられない」
「あまりプレッシャーにしばられない」
「やりたいことやります 乗り方は」
「自分のやりたいレースをやります」
自分の思っていたレースをやらなくて負けた時、無難な乗り方をして負けた時が一番悔しいと武豊騎手は語りました。
無難に乗れば負けても批判も少ないし、言い訳もできるけれども、結果がダメでも思ったことをやったことは間違っていないだろうと思うようにしていることの表れがこれらの言葉に出ています。
その考え方を実践した例として、2001年のGⅠエリザベス女王杯で本来先行馬だったトゥザヴィクトリーを敢えてスタート直後に離れて1頭だけ外に出して落ち着かせて馬群の中に入れ、後方からの競馬を行ったことがあげられていました。
先行馬が多かったことや気性の問題さえ解決すれば本来の持ち味である脚力を活かした競馬ができるはずとの考えがあって取った作戦でしたが、福永騎手曰く、GⅠでここまで思い切った作戦を取った上で勝ってしまうのが武豊騎手の凄さだということでした。
「いい馬に乗っているから勝つとは思わない」
「いい馬に乗っているから勝つとは思わない」
「いい馬に乗れる状況や環境を作るのがジョッキーだ」
「同じ馬に乗ったら負けないとかは騎手として言っちゃいけないことだと思います」
いい馬に乗れるのは勝利の条件かとの問いに答えた言葉たちです。
レースそのものだけでなくレース前からスタッフやオーナーと関係を作り、期待に応え続けることの重要性を説いています。
昔から、武豊騎手の乗る馬はいい馬だから自分が騎乗しても勝てると言っている騎手たちに向けてのコメントも取れます。
日々のこつこつとした積み重ね、小さなレースから努力をしているからこそ、大きなレースで有力馬に騎乗することも出来て勝つことも出来ているんだということを言いたいと武豊騎手は語っていました。
「騎手愛は世界の誰にも負けない自信がある!」
競馬愛ではなく騎手愛と伝えるところが、騎手という職業を心から愛していることが伝わってくる言葉です。
最近は引退に関する質問や引退後のことを聞かれる機会も増えてきたそうですが、現時点では「騎手 武豊」が大好きで、騎手をしていない自分を考えることはできないとのことでした。
「昨日武井さんにお会いして原点に戻れたのがよかったと思います」
この番組の取材が行われた翌日の2016年3月17日に名古屋競馬場で行われた交流重賞GⅢ名古屋大賞典でアウォーディーに騎乗し圧勝したことに対して、番組の進行役だった武井壮がお祝いメールを送った際に返ってきたメールの言葉です。
どこまでも謙虚な武豊騎手の初心を忘れない気持ちが現れている言葉だと感じることができます。
ちなみに余談ですが、武豊騎手はパソコンも持っておらず、携帯電話もいまだにガラケーを愛用しており、メールもあまり使わないということを別の番組で話していましたので返信すること自体の誠実さをそういった面からも感じ取ることができると思います。
まとめ
今回は一つのテレビ番組に焦点を当てて武豊騎手が発した名言の一部をご紹介してきました。
キタサンブラックの引退により、取り上げられることは暫くの間減るのかもしれませんが、特集が組まれた際には番組をチェックしてみてください。
競馬ファンであれば、きっと何かしら心に響く言葉を聞けるに違いありません。