競馬にはグレードがあるのはご存じでしょうか。
日本でも、グレード競争が存在します。
競馬を見ていたらG1やG2の文字を見たことがあるでしょう。
それがグレード競争です。
ちなみに、G1やG2の「G」はグレードの頭文字で、重賞と呼ばれるものはこのグレード競争のことを指します。
G3<G2<G1の順番にグレードが高くなり、G1になればなるほどそのレースの価値が高くなるとともに、賞金額も高くなります。
そして、同じG1でも賞金額はまちまちです。
例えば、国内のG1で見てみると
日本ダービー 1着賞金2億円
菊花賞 1着賞金1億1500万円
ジャパンカップ 1着賞金3億円
と、同じG1でも賞金額はまばらです。
また、賞金は5着までの馬に与えられます。
例えば、ジャパンカップの5着までの賞金額は
1着 3億円
2着 1億2000万円
3着 7500万円
4着 4500万円
5着 3000万円
です。
2015年のショウナンパンドラが制したジャパンカップでジャングルクルーズという馬が出走しました。この馬は当時条件戦で結果を残し、晴れてOP入りした初戦にジャパンカップを選択しました。
普通に考えたらOP初戦にG1の中でも敷居の高いこのジャパンカップを選択したことで、さすがに太刀打ちできるはずもないと思われ18頭中17番人気でのレースとなりました。
ところが、内枠から先行競馬で最後まで残り4着でゴール板を通過しました。
ジャングルクルーズがこのジャパンカップで得た賞金は4500万円で、同日に京都競馬場で開催されていた京阪杯(G3.1着賞金3900万円)以上の金額を稼いだのです。
このように、賞金が高いレースで5着までに入選すると、G3やG2で勝ち切る以上の金額を得られるケースもあります。
また、1着から5着までの賞金額を合計した金額を賞金総額と言います。
このジャパンカップの賞金総額は5億7000万円となります。
賞金総額でジャパンカップに肩を並べるレースは有馬記念(総賞金額5億7000万円)くらいで、いかにジャパンカップや有馬記念がG1の中でも別格の扱いを受けているかが分かりますね。
では、世界のレースはどうでしょうか。
実はいうとジャパンカップ以上に賞金額の高いレースは世界各地で存在しています。
当記事では、世界のレースで賞金額の高いレースをまとめてみました。
1位 ドバイワールドカップ(UAE・ドバイ)
賞金総額(2019年のもの) 13億2000万円
1着賞金 7億9200万円
2着賞金 2億6400万円
3着賞金 1億3200万円
4着賞金 6600万円
5着賞金 3960万円
6着賞金 2640万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
世界の賞金総額第一位はドバイのメイダン競馬場で3月下旬~4月上旬に開催されるこのドバイワールドカップです。
このドバイワールドカップが開催される日はドバイミーティングといって、ドバイワールドカップ以外にも
ドバイシーマクラシック (芝2410m・G1)
ドバイターフ (芝1800m・G1)
ドバイゴールデンシャヒーン ダート1200m・G1)
等、G1・G2合わせて9つもの重賞が開催されます。
日本では大阪杯と時期が被るため、芝の中距離路線で活躍している馬は大阪杯か、ドバイシーマクラシックもしくはドバイターフのどちらかを選択します。
今年はアーモンドアイやレイデオロはドバイを選択し、アーモンドアイはドバイターフを見事優勝しましたね。
そして、ドバイワールドカップも例外ではありません。
今年はケイティブレイブが出馬を表明していましたが、疝痛のため、やむを得ず出走をやめました。
賞金額の高さもさることながら、砂の凱旋門と称されるこのレースは世界中からダートホースが集まります。
今年のドバイワールドカップを制したのはアイルランド生産でイギリスの競走馬であるサンダースノーです。
今年短期免許で来日しているスミヨン騎手の手綱さばきで、史上初となるドバイワールドカップ連覇を達成しました。
ちなみに日本の馬は過去1頭だけドバイワールドカップを制しました。
2010年の皐月賞馬であるヴィクトワールピサです。
ヴィクトワールピサは芝の馬で皐月賞や有馬記念を勝ち切った馬です。
ドバーワールドカップの時点でダートは未経験でしたが世界中から集まったダートホース相手に勝ち切りました。
この時騎乗していたM・デムーロ騎手もドバイワールドカップに初参戦だったため、人馬ともに初優勝を手にしました。
このため、芝とダートで2つのG1を制したかに思われますが、そうではありません。
実は2010年からダートではなくオールウェザーという合成馬場が用いられました。
オールウェザーの特徴としては砂埃が少なく、水はけもよい馬場のことで、人間の手で作られたので人工馬場とも呼ばれています。
このオールウェザーの馬場条件で勝利したため、ヴィクトワールピサはダートのG1を勝利したとはいいがたいのです。
そのため、ダートを舞台にしたドバイワールドカップを制した日本馬は現在まで一頭もいません。
凱旋門と並ぶ、日本の壁といってもいいでしょう。
なお、オールウェザーは2014年まで施行されましたが、2015年にはダートに戻され、現在のダートでの開催となっています。
2位 ジ・エベレスト(オーストラリア)
賞金総額(2019年のもの) 10億5000万円
1着賞金 4億5375万円
2着賞金 1億6050万円
3着賞金 9300万円
4着賞金 6750万円
5着賞金 5100万円
6着賞金 3375万円
7着~12着賞金 3000万円
(オーストラリア・ドルは1ドル=75円で換算しています)
2017年にオーストラリアで新設されたジ・エベレストが賞金総額第2位にランクインしました。
オーストラリアのオイヤルランドウィック競馬場にて10月に開催される芝・1200mのレースです。
アメリカの賞金最高レースであるペガサスワールドカップに習って設立されて、登録料に60万豪ドル(約4500万円)を払うことで出走可能となります。
登録枠数は12頭立てですべての馬に賞金が与えられます。
歴史の浅いレースなので日本の馬の出走は現在までに1頭もいませんが、今後、ジ・エベレストに出馬する馬が現れるかもしれませんね。
3位 ペガサスワールドカップ(アメリカ)
賞金総額(2019年のもの) 9億9000万円
1着賞金 4億4000万円
2着賞金 1億3750万円
3着賞金 9900万円
4着賞金 7700万円
5着賞金 6050万円
6着~9着賞金 2750万円
10着~12着賞金 2200万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
ジ・エベレストの項で挙げたペガサスワールドカップが賞金総額第3位に入ります。
ペガサスワールドカップも2017年に施行された歴史の浅いレースで、アメリカのガルフストリームパーク競馬場で1月に開催されるダート1800mのレースです。
こちらもジ・エベレスト同様、出走するにあたって50万ドル(約6500万円)の登録料を支払う必要があります。
こちらも日本馬での出走はありませんが、いずれ出走するときが来るかもしれません。
4位 ペガサスワールドカップターフ(アメリカ)
賞金総額(2019年のもの) 7億7000万円
1着賞金 2億9200万円
2着賞金 8765万円
3着賞金 6330万円
4着賞金 5350万円
5着賞金 4870万円
6~10着賞金 3850万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
ペガサスワールドカップの同日・同競馬場で開催されるペガサスワールドカップターフ(芝・約1900m)も賞金の高いレースで、ペガサスワールドカップが新設された2年後の2019年に開設されました。
2019年時点でまだ1回しか開催していません。
記念すべき第一回開催の優勝馬はアメリカの競走馬であるブリックスアンドモルタルです。
日本からも府中のマイルで無類の強さを見せるアエロリットが遠征しましたが9着に敗れてしまいました。
5位 ブリーダーズカップクラシック(アメリカ)
賞金総額(2018年のもの) 6億6000万円
1着賞金 3億6300万円
2着賞金 1億1120万円
3着賞金 5940万円
4着賞金 3300万円
5着賞金 1980万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
アメリカのダート最強決定戦に位置づけするブリーダーズカップクラシックが第5位です。
ダートの2000mで開催されるレースで、11月上旬に開催されます。
アメリカでは芝よりもダートのほうが重視されている世界でも数少ない国で、実質アメリカ最強馬を決める決戦でもあります。
日本馬は過去に4頭が出走していますがいずれも掲示板外で、アメリカ最高峰のレースでは苦戦を強いられています。
6位 ドバイシーマクラシック(UAE・ドバイ)
賞金総額(2019年のもの) 6億6000万円
1着賞金 3億9600万円
2着賞金 1億3200万円
3着賞金 6600万円
4着賞金 3300万円
5着賞金 1980万円
6着賞金 1320万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
ドバイワールドカップの項であげたドバイシーマクラシック(芝・2410m)が賞金総額第6位です。
1998年に第一回が開催されました。
日本馬はステイゴールド・ハーツクライ・ジェンティルドンナがこの舞台で勝ち切っていて、それ以外にもブエナビスタ・ドゥラメンテ・シュヴァルグランが2着に好走しており、日本馬と相性の良いレースともいえるでしょう。
2001年まではG2だったため、2001年にここを制したステイゴールドはG2で開催されていた最後のドバイシーマクラシックを勝ちきったことになります。
6位 ドバイターフ(UAE・ドバイ)
賞金総額(2019年のもの) 6億6000万円
1着賞金 3億9600万円
2着賞金 1億3200万円
3着賞金 6600万円
4着賞金 3300万円
5着賞金 1980万円
6着賞金 1320万円
(1アメリカドル=110円で換算しています)
ドバイワールドカップ・ドバイシーマクラシックと同日に開催されるドバイターフ(芝・1800m)はドバイシーマクラシックと並び6位タイでランクインしました。
賞金総額・入選賞金はドバイシーマクラシックと全く同じです。
ドバイワールドカップが開催されているドバイミーティングがいかにレースに力を入れているのかがよく分かりますよね。
このドバイターフも日本馬にとって相性のいい舞台です。
2019年にアーモンドアイがぶっつけでこの舞台を制したのは記憶に新しいでしょう。
過去にはアドマイヤムーン・ジャスタウェイ・リアルスティール・ヴィヴロスがここを勝ち切っています。
ちなみにヴィヴロスは2017年から2019年にかけて3年連続で出走し(1-2-0-0)とドバイターフにおいて連対率100%で非常に相性のよい馬でした。
引退レースもこのドバイターフでした。
8位 ジ・ゴールデンイーグル(オーストラリア)
賞金総額(2019年のもの) 5億6250万円
1着賞金 3億750万円
2着賞金 1億1250万円
3着賞金 5625万円
4着賞金 2820万円
5着賞金 1260万円
(1オーストラリアドル=75円で換算しています)
オーストラリアで2019年に新設されたジ・ゴールデンイーグルが8位にランクイン。
芝の1500mのレースで4歳限定戦です。
今年の11月に第一回が開催される予定で、現時点ではまだレースは開催されていないです。
今後、世界の競馬に影響をもたらすようなレースになると面白いですね。
9位 メルボルンカップ(オーストラリア)
賞金総額(2019年のもの) 5億8000万円
1着賞金 3億3000万円
2着賞金 8250万円
3着賞金 4125万円
4着賞金 2625万円
5着賞金 1725万円
6着~10着 1200万円
(1オーストラリアドル=75円で換算しています)
オーストラリアのメルボルンカップが9位にランクインしました。
芝の3200mで開催される長距離レースで、世界のレースで最も賞金総額の高いステイヤーレースです。
創設されたのが1861年と、数あるレースの中でも相当歴史のあるレースです。
2006年にデルタブルースが岩田康成騎手騎乗の手綱のもと勝利を収めました。
この年の2着はポップロックで、日本馬のワンツーフィニッシュで決まりました。
この2006年を除くと7頭の馬が挑んでいますがいずれも2桁着順で、海外の長距離レースで苦戦しているのが分かります。
今年は2019年11月3日時点で、重賞連勝と勢いに乗っているメールドグラースがこのメルボルンカップに参戦します。
2000m~2400mで実績のある馬なので距離延長が吉と出るか、凶とでるかは定かではありませんが、無事に完走してほしいところです。
10位 凱旋門賞(フランス)
賞金総額(2019年のもの) 5億7500万円
1着賞金 3億2700万円
2着賞金 1億3100万円
3着賞金 6570万円
4着賞金 3280万円
5着賞金 1640万円
(1ユーロ=115円で換算しています)
日本でもかなり有名な海外のレースでしょう。
フランスのロンシャン競馬場で開催される芝の2400mのレースです。
元々は第一次世界大戦で戦勝国となりながらも衰退したフランスの復興を目的に創設されたレースで、その歴史は1920年までさかのぼります。
この記事を書いているのが2019年なので来年の2020年は開設100周年となります。
凱旋門賞は日本馬にとって敷居が高いものとしても知られています。
1969年に初めて出走したスピードシンボリから50年経過し、それまでに17頭の馬が出走しましたがエルコンドルパサー・ナカヤマフェスタ・オルフェーブルの2着が最高です。
2019年にもフィエールマン・ブラストワンピース・キセキの3頭が参戦しましたが凱旋門賞開催の前日に降った雨の影響で馬場が非常に重たくなり、日本の軽い馬場しか知らない3頭にとっては厳しい競馬となってしまいました。
今後も日本馬の挑戦は続くでしょう。
いつか、日本馬が凱旋門のタイトルを掴む時が来ることに期待したいですね。
>> 凱旋門賞の賞金は日本円でいくら?1〜5着賞金額と過去9年間の推移
海外には日本以上に賞金額の高いレースがたくさんある
以上が海外の競馬の賞金総額トップ10になります。
日本のレースはランク外で、日本で一番賞金総額の高いジャパンカップと有馬記念はランキングに入れると11位になります。
トップ10を見ていると、やはりドバイのレースが賞金で群を抜いているのと、オーストラリアが近年競馬に力を入れている点、そして、日本でも知名度が高い凱旋門賞が意外とそこまで順位が高くなかったですね。
凱旋門賞が開催されるフランスもそうですが、欧州では競馬の賞金にそこまでこだわっていません。
むしろ、グレード競争を勝つことで、名誉と栄光が得られるのほうが重要視されています。活躍した馬に拍が付くことで、トレードや繁殖馬としてシンジケートが組まれることから、レースでの賞金はさほど重要視していないようです。
賞金が低い理由はもう一つあり、海外のレースの賞金の主は競馬のスポンサーからです。
もちろん、馬券の売上も賞金の一部にありますが、その多くはスポンサーなのです。
日本は馬券の売上で賞金の大半を賄っているので、馬券を買えば買うほどそのレースの賞金額も増加するかもしれません。
ちなみにドバイはイスラム教なので賭け事は禁止されています。
そのため、賞金はドバイの首領であるシェイク・モハメド氏のポケットマネー(UAEの国家予算)から降りています。
ドバイだけは別格ですね。
伝統のあるレースから新設されたレースまで世界各地にある高額賞金レース。
日本に住んでいると世界の競馬の情報があまり入ってきませんが、海外のレースを扱うサイトはいくつかあり、中でもJRAが運営する「JRA VAN ver.world」は更新量も多くて見やすいのでお勧めです。
そのほか、Youtubeなどの動画サイトでも海外のレースが投稿されています。
海外競馬に興味のある方はぜひ海外のレースもご覧になってみてください。
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