日本馬のレベルが飛躍的に上昇し、活躍の場を求めて海外遠征する競走馬が年々増えてきています。
競走馬は繊細な動物なので、海外へ輸送するだけでも大変な作業になります。
遠征する競走馬の数が増えていくにつれて、競走馬を輸送する技術も向上してきました。
日本国内で見せていたパフォーマンスと同じかそれ以上の走りを慣れない外国の地で見せるためには、輸送する段階から勝負は始まっていると言っても過言ではありません。
海外遠征には欠かせない競走馬の輸送について知識を持っておくと、違った角度から日本馬の海外遠征を楽しむことができるかもしれません。
競走馬の輸送方法
500kgもある競走馬を輸送するのは簡単なことではありません。
海外遠征を行う競走馬はまず検疫厩舎に入厩します。
そこで各種検査やワクチン注射などを行い、伝染病などの拡散を防ぐ処置が施されます。
検疫厩舎で一定期間を過ごした後、馬運車で空港へ輸送されます。
空港では、ストールと呼ばれる専用のコンテナに競走馬を乗せます。
海外遠征では帯同馬が同行するケースが多いですが、ストールには3頭まで乗り込むことが可能で、同じストールで輸送することができます。
最近の海外遠征ではチャーター便を用意する場合が多くなってきていますが、一般の飛行機によって輸送される場合もあります。
ストールの内部には競走馬の食事や水が用意されており、厩舎の馬房にいるときと同じように競走馬は過ごすことができます。
競走馬の海外への輸送費は?
日本馬が海外招待競走に出走する場合には遠征費は主催者側の負担となりますが、そうでないレースに出走する場合は馬主がその費用を負担しなければなりません。
競走馬の海外遠征に必要な費用は遠征先によって異なってきますが、1000万円〜2000万円が一般的のようです。
JRAには重賞優勝馬を対象とした1000万円を上限とした補助金制度があります。
個人馬主の場合は個人の負担となりますが、一口クラブが馬主の場合は会員が遠征費を負担することになります。
海外輸送での体重の増減
競走馬は繊細な動物なので、輸送により体重が減ることがよくあります。
大きく減る競走馬では10kg程度減ってしまいますが、環境に慣れるにつれて減った体重は戻ることもあります。
海外遠征において体重を含む競走馬の状態の維持は大変重要ですが、ある程度受け入れ態勢が確立している近年の海外遠征では上手くマネジメントできていると言えるでしょう。
海外遠征のリスクとは?
普段と違う環境でレースに出走するのが不利であることは言うまでもありません。
しかし先ほども触れた通り、競走馬の状態を上手くマネジメントできているので国内で出走する場合と同程度の状態で出走させることは十分可能です。
欧州のように調教場が郊外にあり、広大なコースでのびのびと走らせることができるのはむしろプラスと言えます。
ストレスのかからない環境で調整することができるので、輸送でかかった競走馬への負担も解消することができるのでしょう。
しかし、輸送には飛行機を利用するのでスケジュール通りに目的地に到着するとは限りません。
こうなってはその後の調整でも競走馬の体調を万全な状態に持っていくことは不可能です。
海外遠征では滞りなく目的地に到着することが非常に大切なのです。
まとめ
海外遠征がより身近なものになって、遠征する競走馬も多くなりました。
また飛行機による輸送は競走馬にどうしても負担が強いられてしまいます。
そのため厩舎側には綿密な計画が求められます。
海外の地で競走馬が最高のパフォーマンスを披露するためには、レースに出走するずっと前から勝負が始まっているのです。
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