父、母の父の名前は知れ渡っていても、母馬の名が知られることはよっぽどのことがない限りありません。
エアグルーヴ・アドマイヤグルーヴ母娘やビワハイジのように現役時代から有名だった馬なら仕方がありませんが、現役時代も無名に近かった母馬となると、ディープインパクトの母ウインドインハーヘアやオルフェーヴルの母オリエンタルアートくらいしか思い浮かばないファンも多いでしょう。
そういった意味では、「母馬の名」を広めたさきがけとなったのが、母としてあまりにも偉大すぎる活躍を見せたパシフィカス(父ノーザンダンサー)でしょう。
パシフィカスの代表産駒一覧、産駒の成績
パシフィカス産駒といえば、なんといっても史上5頭目の三冠馬となったナリタブライアン(父ブライアンズタイム)があまりにも有名でしょう。
しかし、パシフィカスの名を知らしめたのは、ナリタブライアンの兄、芦毛のビワハヤヒデ(父シャルード)という、こちらも菊花賞、天皇賞春、宝塚記念をとてつもない強さで勝った名馬でした。
しかも、本当はブライアンズタイムとの子を予定していたのに、いろいろ事情があって、まったく無名種牡馬のシャルードの仔をお腹に宿して、しかも福島県の牧場で誕生したのがビワハヤヒデだったというエピソードもあって、「パシフィカス恐るべし!」の声はひときわ高まりました。
さらにその弟(ブライアンの全弟)ビワタケヒデも重賞を勝つ活躍を見せ、さすがに3兄弟でGⅠ7勝、重賞17勝という成績は、ちょっと他には例をみないすごさです。まさに、パシフィカス恐るべし。
しかも、8頭産駒を送りだしたうちの6頭が中央で勝ち鞍を挙げており、勝ち鞍を挙げなかった1頭(見出走)は、GⅠまであと一歩まで迫っているラストインパクト(父ディープインパクト)の母スペリオルパールなのだから、返す返すも、パシフィカスの血はほんとうに恐るべしという以外にありません。
パシフィカス産駒の特徴
やはりナリタブライアン、ビワハヤヒデの偉大すぎる兄弟のイメージが強くなりますが、とにかくエンジン全開のときに発揮されるポテンシャルは、はっきりいってケタはずれ、しいて言えばオルフェーヴルやグラスワンダーのエンジン全開のシーンに近いといえばわかりやすいでしょうか。
ディープインパクトのように美しく伸びるのでもなければ、エルコンドルパサーのように回転力でグングン進むというわけでもなく、何というか、言葉は悪いですが、まさに「ぶっ飛んでくる」といった爆弾走法だったのが彼らの特長です。
もうこういう競走馬はそうそう現れないでしょう。
まとめ
サンデーサイレンスが繋養されて以来、日本の競馬は根底から覆されたといわれましたが、牝馬でいえば、間違いなくこのパシフィカスというとてつもない血のポテンシャルが日本の競馬を席巻したといっても過言ではないはずです。
パシフィカスは残念ながら1999年5月に亡くなっていますが、その血はきっとこれから生き残っていってくれるはずです。