スポーツ新聞や競馬専門紙の馬柱には各競走馬の負担重量を意味する「斤量」が掲載されていますよね。
レースにもよりますが斤量は出走馬全てが均等に斤量を設けるレースもあればハンデ戦のように軽斤量の馬と重斤量の馬が混在するレースもあります。デビュー間もない若手騎手の場合は低斤量の恩恵を受けることもあります。
また、前走で重斤量だった馬が軽斤量で出馬するケースもあり、斤量の増減を馬券購入の判断材料にしている競馬ファンも多いはずです。
斤量とは馬に騎乗する騎手の重さを指す言葉で一般的には48kg~60kg程度の幅があります。騎手たちは負担重量に合わせて自身の体重をコントロールしているのですが、騎手には体重制限が存在しているのでしょうか。
ここでは、騎手の体重にまつわる話題に迫っていきます。
騎手に体重制限はある?
騎手になるための教育や訓練を受ける競馬学校入学時には「45kg未満」という体重制限が設けられているのですが、競馬学校を卒業した騎手たちには体重制限は設定されていません。
レースでの斤量は一般的には52kg~58kgになります。
現役で走る騎手は体重制限こそありませんが体重のコントロールをおろそかにしているとレースに出る事すら叶いません。
そのため騎手たちは自身の体重をコントロールするために様々な努力を重ねているのです。
体重と斤量の違い
体重にしろ斤量にしろ馬に課せられる重量であるため同じ意味に感じるかもしれませんが実はそうではありません。
体重はその名の通り人間の重さを指す言葉で騎手に関わらず一般の人でも身体測定や健康診断で測定することでしょう。
斤量は
騎手の体重+馬具の重さ
です。
体重だけでは足りない重量を勝負服や鞍の中に板状の鉛を装着した状態の合計が斤量です。
レースで定量戦といって全ての馬が決められた斤量で走るレースがありますが、全ての騎手が全く同じ体重で走ることは不可能であるため、騎手はレースで定められた斤量よりやや軽い体重を常にキープし、レースに応じて重りをつけて調整するのです。
騎手の適正体重は?JRA騎手の体重一覧
2020年の現役のJRA所属騎手の体重から適正体重を探っていきます。
ルメール :53kg
デムーロ :52kg
福永祐一 :52kg
武豊 :51kg
川田将雅 :51kg
松山弘平 :51kg
戸崎圭太 :49.7kg
岩田望来 :47.5kg
藤田菜七子 :45.6kg
松若風馬 :45kg
ご覧のとおり、G1レースをいくつも勝っている名騎手たちの体重は50kg台前半となっていますので、騎手の適正体重は53kgまでといえるのではないでしょうか。
成人男性の平均体重は65kg~70kgとされていますから、騎手の皆さんは一般の男性よりも10kg以上軽い体重をキープしながら、競馬場で熱い戦いを繰り広げています。
騎手の体重はレースに影響する?
騎手はレースでの斤量よりもやや軽めの体重でレースに出走する事がほとんどです。
レース前に鞍や勝負服の背中に板状の重りをつけてレースの斤量を調整するため基本的に騎手の体重がレースの結果に影響する事はありません。
体重オーバーの場合は、ペナルティも
でも、レースでの斤量よりも重い体重でレース当日を迎えてしまった場合はどうなってしまうのでしょう。
一言でいうとペナルティが与えられます。
具体的には
騎乗停止処分
過怠金・戒告
再教育
を受けてしまいます。
2014年11月15日の東京競馬場では、フランス人騎手のピエールシャルル・ブドーが体重オーバーを避けるため、ブーツを脱ぎ、靴下のままレースに参加した事があり、戒告処分を受けました。
また、2018年10月28日の新潟競馬場においては11レースに騎乗する西村淳也騎手が48キロで出走すべきところを調整に失敗して48.5キロで出走したことで過怠金処分を喰らいました。
このように騎手の体重が直線的にレースに影響する事はあまりありませんが、体重オーバーをしてしまうと何かしらのペナルティをもらってしまいます。
仮に騎乗停止処分を受けた場合は、翌週以降の騎乗予定を全てキャンセルしなければならず、騎乗依頼を出していた調教師やオーナーからの信頼を失ってしまいます。
ですから、騎手はレースで勝つだけでなく自主的に体重制限をしていく必要がある職業なのです。
体重管理は騎手の大切な仕事
騎手の主な収入源はレースに出走すること、レースで勝利することです。
そこで初めて収入を得られるわけですからレースに出走できないことは騎手にとっては致命的です。
そのためレース開催日も、それ以外の日は必至で体重管理を心がけているのです。
そんな騎手の減量法について紹介していきます。
とにかくサウナに入る
JRAが管轄のトレーニングセンターにはサウナ施設がもうけられており、24時間稼働しています。
多くの騎手は少しでも時間が空けばサウナに入って身体を絞るといわれています。
元笠松競馬所属で元JRA騎手の安藤勝己さんは中央移籍当時、トレーニングセンター内に24時間稼働のサウナがあることに感動し、暇があればサウナに入って体重を落としていたといわれています。
徹底的な食事管理
体重管理するには食事管理が一番大切です。食事管理は騎手によって様々ですが
野菜を多く摂取する
高カロリーのものは控える
糖質制限
一日三食は食べない
といったものが多いようです。よくよく見ると一般人のダイエットとそこまで変わりません。
ジョッキーの代名詞である武豊騎手は小さいころから家で白ご飯が出てこなかったそうです。
競馬一家だった武家では日々の生活から食事制限を心がけており、その結果が米を習慣づけしなかったのでしょう。そのため今でもほとんど米は食べないそうです。その話を聞かされた武豊騎手はジョークで
「米は日本酒で取っている」
と応えられたそうです。
武豊騎手は身長170cmと、騎手としては非常に大きいです。しかしながら数多くのレースに出走しているのは日々の生活で食事制限を行っているからなのですね。
また、武豊騎手の弟で現調教師の武幸四郎騎手は武豊騎手よりもさらに大きい177cmの身長を持ちます。苛酷な減量のために武幸四郎騎手の骨密度は70代の老人に近いといわれています。
汗を流す
サウナも汗を流せますが運動でも汗を流すことができます。
多くの騎手は筋トレやランニングを欠かさず行っていてとにかく体内の余分な脂肪を運動で燃やしています。
減量は夏の暑い時期ほど汗がでるため体重管理は夏のほうが楽みたいです。冬の寒い時期では汗が出にくいため多くの騎手は夏の時の数倍身体を動かして減量に取り組んでいるといわれています。
体重を維持するために騎手が心がけていること
フェブラリーステークスでしんがり人気だったコパノリッキーを勝利に導いたり、安田記念で逃げて勝ったロゴタイプに騎乗した田辺裕信騎手がサンスポ競馬で掲載している田辺裕信 ゆる~い話にて騎手の斤量のお話しが掲載されてたので一部紹介します。
騎手は基本的に朝晩の2食で生活しているようで、昼間はバナナや水、スナック菓子を少量ずつ食べて過ごしているみたいです。
競馬開催日にほとんどのレースに騎乗予定の騎手に至ってはほとんどご飯を食べないみたいです。
レース終了後はさすがにお腹が空くようですがボクサーのように検量後にがっつりご飯を食べるということもないみたいです。
まとめ
騎手はレースに出走しないと収入を得ることができないためほとんどの騎手がレースに勝つのと同じくらいの気持ちで減量に取り組んでいます。
ほとんどの騎手が小柄で一般人の平均体重よりも軽いのにはそういう背景があったのですね。
減量オーバーしてしまうと騎乗停止処分や調教師、馬主からの信頼も失ってしまいます。
調教師や馬主の信頼があって初めて馬に乗せてもらえるわけですから日ごろから徹底的に体重管理を行っているのですね。
毎週競馬場で目にする騎手が見えないところでこのような努力をされていることを、紹介させていただきました。
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