引用:wikipedia
ハーツクライの現役時代の成績は19戦5勝で、内約は(5-4-3-7)です。
有馬記念とドバイシーマクラシックの2つのG1を制していますが、それ以外に制したG1は京都新聞杯のみと、種牡馬としてはそこまで多くの重賞を手にしていません。
そのハーツクライが名声を轟かせたのは2005年の有馬記念です。なぜなら、当時無敗で三冠を成し遂げたディープインパクトを真っ向から斃した日本調教馬として唯一の馬だからです。
ちなみにこの時のハーツクライに騎乗していたのは現在、JRA所属の外国人騎手のルメール騎手です。ルメール騎手の初G1はこの有馬記念のハーツクライでした。
ディープインパクトに先着したことで一気に世に名を広めたハーツクライは翌年のジャパンカップを最後に引退を表明しました。
引退後はシンジケートが組まれ、産駒が華々しくデビューを飾りました。
ハーツクライ産駒は多くの舞台で活躍している馬が非常に多いです。
ここではハーツクライの代表産駒を紹介し、また、ハーツクライ産駒の特徴を紹介していきます。
個性あふれるハーツクライ産駒を紹介!
(2020年5月5日のデータです)
シュヴァルグラン 獲得賞金10億69万円
元横浜ベイスターズの投手である佐々木浩主氏が所有する馬としても有名なシュヴァルグランはハーツクライ産駒の中で最も獲得賞金の多い馬です。
母のハルーワスウィートは尻尾のない馬として有名ですが、ヴィクトリアマイルを勝ったヴィルシーナや秋華賞・ドバイターフを制したヴィヴロスを輩出している名牝です。
ハルーワスウィートの第4仔として誕生したシュヴァルグランはクラシックとは無縁で競走馬人生を送りましたが、条件戦で少しずつ力をつけはじめ、古馬になってから大舞台にのし上がりました。
4歳の頃の勝ち鞍は阪神大賞典(芝3000m)とアルゼンチン共和国杯(芝2500m)です。
その他にも天皇賞(春)で3年連続馬券に絡んだり、有馬記念で2年連続で馬券に絡んだりと、中距離から長距離にかけて結果を残していました。
そのシュヴァルグランが掴んだG1が2017年のジャパンカップです。
手綱を握ったボウマン騎手に導かれ、この時すでにG1を6つ手にしたキタサンブラックやこの年のダービー馬であるレイデオロを抑えて優勝したのは記憶に新しいでしょう。
7歳時は海外を拠点に競馬をしましたが、さすがに年齢によるものか、それまでのパフォーマンスは発揮できず、2019年の有馬記念を最後に引退しました。
スワーヴリチャード 獲得賞金8億9,132万円
中距離の第一戦で活躍したスワーヴリチャードもハーツクライ産駒です。
レイデオロが制したダービーの二着馬です。クラシックタイトルを手にすることはできませんでしたが2018年の大阪杯、2019年のジャパンカップを制しています。
典型的な中距離馬で、勝ち星はそこまで多くありませんでしたが、通算成績19戦6勝(6-3-4-6)とどんな大舞台でも馬券内に絡んでいました。
2019年のジャパンカップでは自身としても1年半ぶりとなる勝ち星をあげることができました。
この年の有馬記念で先ほど紹介したシュヴァルグランと共に引退することとなりました。
リスグラシュー 獲得賞金8億8,738万円
ハーツクライ産駒の牝馬を代表する一頭でしょう。
2歳のアルテミスステークスを勝ち切り、
阪神ジュビナエルフィリーズ
桜花賞
秋華賞
ヴィクトリアマイル
と4つのG1で結果を残しますがあと一歩のところで他の馬に敗れて2着でした。
力は十分あるにもかかわらず、相手関係に恵まれなかったことで、4歳春の時点でG1タイトルは一つも手にできませんでした。
そのリスグラシューが覚醒したのは主戦を務めた武豊騎手から外国人騎手に乗り替わってからのことです。
4歳の時に挑んだエリザベス女王杯でモレイラ騎手の手綱のもと、ライバル牝馬を蹴散らして優勝。自身初となるG1タイトルを手にしました。
暮れの香港カップでも2着に健闘し、牡馬相手にも活躍を見せたリスグラシューが覚醒したのが5歳の頃です。
この年の宝塚記念に紅一点として出馬を表明すると、この年初来日したレーン騎手の手綱のもと、同期のレイデオロやスワーヴリチャード、キセキらを交わして見事優勝します。
前年のエリザベス女王杯を制した馬が翌年の宝塚記念を制するのは数年前にキタサンブラックやドゥラメンテを抑えて優勝したマリアライトを彷彿させる活躍を見せましたが、リスグラシューの活躍はこれに留まりません。
レーン騎手の母国であるオーストラリアのG1、コックスプレートにおいても4コーナーから追い込みを開始して海外牡馬を蹴散らします。
そして次走に迎えた有馬記念を直前に、まさかの電撃引退が発表されました。
引退レースとなった有馬記念では同期のスワーヴリチャードやレイデオロ、そしてキセキと、宝塚記念で顔を合わせたメンバーが出馬を表明しました。
3歳勢からはこの年の皐月賞馬であるサートゥルナーリアや菊花賞馬であるワールドプレミアが参戦しました。
そして昨年の年度代表馬であるアーモンドアイらが参戦し、グランプリレースに相応しいメンバーが揃いました。
リスグラシューに騎乗したのは宝塚記念で勝利を導いたレーン騎手です。
後方から待機していたリスグラシューは、最後の直線で馬群を鋭く抜け出します。
一度抜け出したリスグラシューを止められる馬はいませんでした。
レーン騎手はノーステッキでした。グングンと抜け出したリスグラシューは2着馬サートゥルナーリアに5馬身差をつける完勝で有終の美を飾ったのです。
2歳の頃から注目されていたもののなかなか勝ち星をあげることができずに辛苦を舐め続けていたリスグラシュー。
敗退を繰り返しながらも、しっかりと食べ、調教をし、デビュー時の428キロから、引退レースとなった有馬記念では468キロと、40キロも馬体を成長させ、最終的に東西グランプリレースを制するまでに至りました。
デビューからリスグラシューを追い続けていたファンにはたまらないものがあったでしょうし、リスグラシューの関係者にとっても目から光るものが零れる思いだったと思います。
ハーツクライ産駒の成長性を見せつけたリスグラシューは繁殖牝馬として、さらに活躍が期待されます。
ジャスタウェイ 獲得賞金5億9,569万円
2010年代前半で活躍したジャスタウェイの馬名の由来を直訳すると
「その道」
という意味になりますが、実際は馬主兼アニメ脚本家である大和屋暁氏の代表作である少年ジャンプの「銀魂」に出てくる登場人物からとられています。
ジャスタウェイは3歳の頃にアーリントンカップを制したものの、NHKマイルカップやダービーでは特に見せ場なく敗れています。
秋の毎日王冠で12番人気で2着に入選するなどして、穴党に貢献こそしたものの、この年は目立った活躍はしませんでした。
ジャスタウェイが調子をあげたのは4歳の秋でしょう。
6月のエプソムカップ、夏の関屋記念、そして昨年大健闘した毎日王冠と3戦連続で2着に健闘したジャスタウェイがこの秋最初に挑んだG1が天皇賞(秋)でした。
この年は勝ち星を一つも手にしていませんでしたが3つの重賞で2着に健闘したジャスタウェイは左回りの適性が評価されて5番人気に支持されました。
迎えた天皇賞(秋)では前年の牝馬三冠を達成したジェンティルドンナ相手に4馬身差をつける圧勝劇で優勝、初G1を手にしたのです。
ジャスタウェイの活躍はこのままでは終わりません。
翌年の中山記念を勝ち切って挑んだドバイデューティ―フリーにて2着馬ウィルキンゲトリクスに6馬身差をつける勝ちっぷりを見せ、従来の記録を2秒以上更新する1.45.52で完走しました。
このレースは世界中で評価されることとなり、ジャスタウェイはワールド・サラブレッド・ランキングにおいて日本馬として史上初となる世界単独1位にランキングされたのです。
帰国初戦となった安田記念は不良馬場開催となりましたが、グランプリボスとのたたき合いを制し、ワールドホースとしての威光を見せました。
秋はゴールドシップやこの年の桜花賞馬であるハープスターと共に凱旋門賞に挑みましたが、世界の壁は厚く、敗れてしまいます。
帰国後はジャパンカップに挑んで2着に健闘し、引退となった有馬記念でも4着に入選し、引退することとなりました。
引退後は種牡馬として社台スタリオンステーション入りしました。
産駒は2018年からターフデビューを果たしています。
有名な産駒は
2018年のホープフルステークスで2着に入選したアドマイヤジャスタ
2019年のクラシック3戦全てで馬券に絡んだヴェロックス
2019年のチャレンジカップを制したロードマイウェイ
がいます。
ウインバリアシオン 獲得賞金5億7,994万円
ウインバリアシオンの主な重賞勝ち鞍は
青葉賞(G2)
日経賞(G2)
のみです。
現在は青森県の荒谷牧場にて種牡馬入りしています。
G1タイトルを手にしていないどころか、手にした重賞タイトルも2つと、種牡馬入りには厳しい条件だったウインバリアシオンが種牡馬入りできたのは、同期のオルフェーヴルの存在があったからです。
ウインバリアシオンは
ダービー
神戸新聞杯
菊花賞
有馬記念(2013)
において2着に健闘しましたが、この4つのレースで1着だったのが三冠馬のオルフェーヴルでした。
ジェンティルドンナをオルフェーヴルとしたらウインバリアシオンはヴェルシーナのようなポジションです。もしオルフェーヴルがいなければクラシックを二冠獲得し、グランプリホースとなり得た可能性があるのです。
このことが評価され、生産地としては異例の青森県にて種牡馬入りすることとなりました。
産地としてはマイナーな青森県で、種付け数もそこまで多くはありませんが、産駒が誕生し、2019年からデビューしています。
現時点では大きな活躍はありませんが、父が大舞台で結果を残したように産駒にも大きな活躍してほしいですね。
フェイムゲーム 獲得賞金4億1,114万円
ハーツクライ産駒を代表する長距離馬です。
主な勝鞍は
京成杯(2013)
ダイヤモンドステークス(2014.2015.2018)
アルゼンチン共和国杯(2014)
目黒記念(2017)
と重賞タイトルを6つ手にしています。
8歳まで現役で走り続けたフェイムゲームはダイヤモンドステークスに5年連続で出走しました。
また、ゴールドシップが制した2015年の天皇賞(春)において直線で鋭くゴールドシップに追撃し、2着に入選したのも記憶に新しいでしょう。
レイデオロが制した日本ダービーの日に開催された目黒記念では8番人気の評価を覆す活躍で1着に入選しました。
このレースでは元セクシー女優の明日香キララさんがフェイムゲームの単勝を30万円分購入して的中し、573万円を手にしたことでも話題になりました。
ワンアンドオンリー 獲得賞金3億2,768万円
2014年のダービー馬であるワンアンドオンリーもハーツクライの仔で、皐月賞で2着、そしてダービーを制したことでこの世代のトップに立ったかのように思えました。
ところが、神戸新聞杯の勝利を最後に、勝ち星どころか馬券からも遠ざかってしまいます。
菊花賞で9着に敗れたことから調子を崩したのか、距離を変えたりグレードを落としてレースに出走しても凡走が続きました。
6歳まで現役で走りましたが、ついには一勝もすることなくターフを去ることになりました。
それでも3歳春時点では第一線で活躍していたことから、現在はアロースタッドにて種牡馬入りしています。
サリオス 獲得賞金1億6,248万円
2019年の朝日杯フューチュリティステークスにて2着馬のタイセイビジョンに2馬身半差をつけ圧勝したサリオスは2020年のクラシックの最有力候補でしょう。
3戦3勝と無敗で3歳になったサリオスが初戦に挑んだのは皐月賞。
トライアルレースを叩かずに挑むことを選択しましたが、ホープフルステークスを制したコントレイルも3戦3勝と無敗でぶっつけで皐月賞に挑むこととなり、話題はサリオスとコントレイルで二分する形になります。
皐月賞はコロナウイルスの影響で無観客開催となりましたが、短期免許で来日したレーン騎手の巧みな先行競馬で、距離適性をものともせずに勝利を手にしようとします。
しかし、向こう正面半ばから進出を開始していたコントレイルが直線で一気に抜け出し、2歳G1馬のマッチレースとなり、最終的にはコントレイルに軍配が上がりました。
この皐月賞はG1ホース2頭の一騎打ちとなり、サリオスはコントレイルに敗れはしたものの、コントレイルとの差は半馬身でした。
この皐月賞で3着に入選したガロアクリークには3馬身半差をつけて入選しているため、この世代の強弱がはっきりとしたことでしょう。
NHKマイルにサリオスの名は登録されていなかったため、現時点ではダービーに挑むことが考えられます。
ダービーでコントレイルにリベンジしてほしいですね。
ハーツクライ産駒が好走する舞台、コース距離
当記事で紹介したハーツクライ産駒は中距離~長距離馬が多く、今回紹介しきれなかった馬の中にも中距離や長距離で活躍している馬が多数そろっています。
フェイムゲームやシュヴァルグランの活躍から、有馬記念や天皇賞(春)での活躍も多いのがハーツクライ産駒の特徴で、長距離レースでは積極的に狙っていきたいですね。
逆に、短距離やマイルで結果を残している名馬は少数に感じます。
サリオスやリスグラシューはマイルでも結果を残していますが、マイルを得意とするダイワメジャーや好走実績の高いディープインパクト産駒よりは少ないでしょう。
短距離に関してはより顕著で、サクラバクシンオー産駒やアドマイヤムーン産駒のほうが有名馬を輩出しています。
ダート適正に関しては低くはないですが高くもありません。
2017年のホープフルステークスを制したタイムフライヤーが2019年の武蔵野ステークス(ダート・1600m)で2着に健闘していることから、ダート適正は決して低くありません。
しかし、ダートの重賞馬を輩出しているわけでもないので、ダート色の強い種牡馬やキングカメハメハ産駒と比較するとダート適正は低く感じます。
ハーツクライ産駒は東京巧者?
ハーツクライ産駒はどの競馬場でも結果を残しますが、その中で突き抜けて好走するのが東京競馬場です。
たとえば3歳のジャスタウェイが挑んだ毎日王冠や、シュヴァルグランが5歳の頃に挑んだジャパンカップは全て東京競馬場で開催されました。
他の競馬場で結果を残しつつも勝ち切れない馬が東京競馬場を舞台にした重賞でいきなり活躍する傾向があるのです。
不人気の馬でもハーツクライの仔であれば警戒したいですね。
ハーツクライ産駒は晩成型?
ハーツクライ産駒は晩成型という意見をよく聞きます。
確かに獲得総賞金が産駒でトップのシュヴァルグランや、ワールドサラブレッドランキング1位になったジャスタウェイ、牝馬のリスグラシューの活躍を見ると、古馬になってから結果を残しているため大器晩成型かもしれません。
しかし、リスグラシューやサリオス、スワーヴリチャードの戦績を見ると、若いころにも十分結果を残しています。
また、ステイヤーのフェイムゲームや8歳時に天皇賞(春)において2着に入選したカレンミロティックの存在から年を重ねても走り続ける馬もいます。
このことから、ハーツクライ産駒は
・年齢を重ねるにつれ成長し続ける
・年を重ねても衰えを感じさせない走りを見せる
・若くして結果を残す馬もいる
と捉えてもよいかもしれません。
ハーツクライ産駒の通算成績
(2020年5月5日時点でのデータです)
産駒数 1326頭
中央での勝利数 748回
重賞勝利馬 36頭
G1勝ち馬 8頭
まとめ
ハーツクライ産駒は若くして結果を残す馬が多数いる上に、年齢を重ねてからビッグレースを勝ち切る馬も多いですね。
特に古馬になってから大舞台で結果を残す馬が多く存在しています。
その背景にはハーツクライ自身が古馬になってディープインパクトに先着したときのような成長性が産駒に継がれているのでしょう。
また、中距離や長距離で結果を残す馬が多くいるため、例え年齢を重ねていたとしても芝の2400m以上の舞台であれば警戒はしておきたいですね。
目黒記念のフェイムゲームや8歳のカレンミロティックが挑んだ天皇賞(春)のように、2400m以上のレースに出走するハーツクライ産駒で人気を落としていたら穴馬として狙えるかもしれません。
大型種牡馬であるディープインパクト、キングカメハメハは2019年に死去してしまいましたが、ハーツクライは第一戦で種牡馬生活を送っています。
今後もハーツクライ産駒の活躍に期待したいですね。
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