第23回秋華賞ゴール前(2018年10月14日、京都競馬場にて)
出典:wikipedia
有馬記念。
年の暮れに開催されるグランプリレースで毎年豪華メンバーが揃うことからG1のなかでもとくに有名です。
競馬を全く知らない人でも有馬記念の名前は知っている人も多いでしょう。令和初開催となる今年は例年以上に豪華なメンバーが揃いました。
リスグラシュー、キセキ、レイデオロ、スワーヴリチャード、アルアイン…。5歳の馬だけでもこれだけのメンバーが揃いました。
そしてなんといっても遅れながら出馬を表明したアーモンドアイ。鞍上もルメール騎手が騎乗することになりここでも気配がうかがえますね。
今回は有馬記念において間違いなく一番人気に支持されるであろうアーモンドアイがこの有馬記念で好走できるかどうかを考察していきます。
アーモンドアイ、有馬記念出走までの経緯
前走の天皇賞(秋)で2着馬ダノンプレミアムに3馬身差の圧勝劇を遂げたアーモンドアイは次走、香港で開催される香港カップか暮れの有馬記念のどちらかを選択する予定でした。
この時点で連覇のかかったジャパンカップの選択肢はなかったため完全なる二者択一。
悩みに悩んだ末、陣営は香港カップへの参戦を発表します。
香港に向けて調整されていたアーモンドアイでしたが渡航前に発熱を起こしてしまいます。大事を取ることにした陣営は香港への渡航を断念。この年の香港カップはウインブライトに座を譲りました。
そのころ、競馬界ではこの時期の名物ともいえる有馬記念のファン投票が開かれました。
11月21日の第一回中間発表でアーモンドアイは2位のリスグラシューに2,000票離しての32,000の票数を稼いで1番人気に支持されます。
11月28日の第二回中間発表ではアーモンドアイはさらに票数を伸ばして71,000票を稼いでこれまた1位に支持されました。
そして12月5日の最終結果発表では100,000票以上を集め、最後の最後までファン投票1位。早い段階から香港C参戦を表明していたにもかかわらずこれだけの支持を集めたのです。
予定通り香港に向かっていれば有馬記念の選択肢はなかったと思いますが、アクシデントの関係で香港行きがなくなり、また、発熱が軽いものだったため、その気になれば有馬記念への出走も可能です。
しかしながら陣営にはいくつかの課題もありました。そのひとつが騎手問題です。
アーモンドアイの主戦を務めていたルメール騎手はこの段階で持ち馬であるフィエールマンへの騎乗が決まっていました。フィエールマン陣営は凱旋門賞のあと、早い段階から有馬記念を目標に調整されていて鞍上もルメール騎手を確保し万全の体制でした。
ところが、アーモンドアイ陣営が香港を取りやめ、有馬を選択肢しているということでやや慌てる格好になります。
特に一番慌てたのはルメール騎手でしょう。ルメール騎手はアーモンドアイを「日本で一番強い馬」と称していますしアーモンドアイがこの有馬記念に出走するのであれば是が非でも騎乗したいでしょう。
同様に有力騎手がほとんど決まったタイミングで出馬を表明したアーモンドアイ陣営の本音もルメール騎手の確保でした。
幸い、フィエールマンとアーモンドアイは勝負服こそ違えどルーツは吉田氏管轄の社台とシルクレーシングなため、騎手確保に関してのやりとりは比較的容易だったかもしれません。
そして、12月10日。陣営はアーモンドアイをルメール騎手継続で有馬記念への出馬を表明したのです。
有馬記念というオールスターレースに現役最強馬が不在であることは例年、よくある話でした。ところがアクシデントとはいえ現役最強馬であるアーモンドアイが参戦することで競馬界はさらに盛り上がりをみせていますね。
アーモンドアイは3歳の頃から古馬や牡馬相手に強すぎる競馬をしてきました。ここからは持ち前のポテンシャルをフルに出し切り、好メンバーが揃った今年の有馬記念で好成績を収められるかを分析します。
【分析その1】距離適正(中山芝2500m)
暮れの有馬記念が開催されるのは中山競馬場の芝2500mです。
芝2500mという特殊な距離にくわえて中山のトリッキーなコース。グランプリレースということで注目される有馬記念ですがコース形態はかなり特殊なのです。
そもそも芝の2500m戦自体が少なく、中山の芝2500mの重賞は有馬記念を除けば天皇賞(春)の優先出走権が得られる日経賞だけです。そのため、データ、好走実績を持つ馬は少なく、中距離もしくは長距離実績のある馬を比較して予想しなければいけません。
アーモンドアイの場合は芝の1600mから2400mまで幅広くこなせます。2500mの距離は未経験ですがプラス100mくらいなら好走できると思います。
【分析その2】未経験の中山競馬場コース(直線310m)
中山競馬場は4大競馬場(中山・東京・京都・阪神)の中で最も直線距離が短いです。
それぞれの直線距離を見ていくと東京が530mほどで阪神が470mほど、京都が約400mとなっている中、中山の直線距離はわずか310mです。
実はアーモンドアイは中山競馬場は未経験です。
牝馬三冠レースの関係で中山競馬場は縁がないままキャリアを重ねてきたアーモンドアイにとって、直線はどう考えても長いほうが末脚を使えます。
新馬戦も小回りの札幌や小倉ではなく新潟をチョイスしていることからデビュー当時からそう思われていたのでしょう。そのため末脚勝負となるとコーナーでスパートをかけなくてはいけません。
幸い鞍上が百戦錬磨のルメール騎手なので仕掛けどころは全く問題ないでしょう。コーナーでのスパートをほとんど経験していないアーモンドアイがそれに対応できるかが課題となります。
ただ、アーモンドアイは2018年のジャパンカップのときのように先行策で勝ち切る競馬もできます。近年は先行競馬で結果を残しつつありますしもしかしたら先行競馬にシフトを変えてくる可能性もあります。
また、京都の秋華賞は小回りのコースで、4コーナーからのラストスパートで大外にぶん回しながらも外から差し切ったレースです。秋華賞よりはメンバーレベルは全然こちらのほうが高いですが、小回りの京都でコーナーワークから仕掛けられたので中山でも十分対応できるような気はします。
【分析その3】タフな馬場
競馬の馬場には高速馬場、かかる馬場というものがあり、それについて説明します。
まず高速馬場というのはタイムが出やすい馬場のことです。アーモンドアイがワールドレコードを叩き出した2018年のジャパンカップは高速馬場に分類できます。
次にかかる馬場というのは時計がかかる馬場のことを意味します。一言でいうならラップタイムが遅くなる馬場です。これは、アーモンドアイが2018年の1月に出走した京都のシンザン記念のときの馬場が開幕週らしからぬ力のいる馬場で、時計のかかる馬場でした。
このように、良馬場~不良馬場以外にも馬場の含水率によって良馬場でも時計のかかる馬場であるときがあります。
基本的に開幕週であるほど芝の痛みはないため高速馬場です。そして開催後期になるにつれ馬場が荒れ果て時計のかかる馬場になります。
さて、暮れの有馬記念は季節の関係もあり高速馬場になることはほとんどありません。どちらかというとタフな馬場で力強い馬の好走事例があります。
アーモンドアイはどうでしょう。
クラシックの桜花賞やオークス、そしてワールドレコードを叩き出したジャパンカップは完全に高速馬場、ジャパンカップに至っては超がつくほどの高速馬場でした。
しかし、3歳の時のシンザン記念は開幕週らしからぬ力が求められた馬場で、最後方一気で逃げ馬ツヅミモンに1と3/4馬身差の勝ちっぷりを見せています。
秋華賞もアーモンドアイが走った過去のレースの中ではまだ力が求められていた馬場で、完璧に立ち回ったミッキーチャームを最後方一気の競馬で捕らえきりました。
この京都の2レースを見る限りアーモンドアイはタフな舞台でも十分すぎるほど末脚を炸裂させることができます。
そのため、暮れの中山の馬場はそこまで心配することはないでしょう。
【分析その4】相手関係(ライバル)
最大の壁として立ちふさがるのはリスグラシューでしょう。リスグラシューは今年の宝塚記念を勝ち切った馬です。
宝塚記念は梅雨の時期に開催されることからタフな傾向が見られる舞台で、レーン騎手の積極的先行策が功をなして鮮やかに優勝しました。
リスグラシュー自身がタフな馬場で好走していますし鞍上は宝塚記念で騎乗したレーン騎手。最初で最後の初対決ということで注目を浴びていますね。
キセキやアルアイン、スワーヴリチャードといった相手はアーモンドアイがかつて倒してきた相手なのでそこまで心配はないです。キセキは凱旋門帰り、アルアインは近2戦の大敗、スワーヴリチャードは前走の反動といったようにいずれの馬も課題があるため、アーモンドアイのほうが好走できると思います。
前走天皇賞(秋)とはまた違った面子が集まり、アーモンドアイに対抗してきましたが天皇賞(秋)と比較しても同じくらいメンバーレベルは高いでしょう。
しかしながらアーモンドアイを管理する国枝調教師曰く天皇賞(秋)を制した段階でのアーモンドアイの出来は8割程度だったそうなので100%で挑んできたら恐らくほとんどの馬は太刀打ちできないと思います。
有馬記念におけるアーモンドアイの課題はメンバー関係とコース形態
この有馬記念においても十分すぎるほどチャンスはありそうに見えるアーモンドアイ。
しかし本音をいうのであれば香港カップへ行きたかったでしょう。
理由は二つあり、一つはメンバー関係です。有馬記念のメンバーと香港カップのメンバーを比較すると香港カップの方がメンバーレベルが低く、勝ちやすいメンバー関係。G1を獲りやすい舞台でした。
もう一つは競馬場による差でしょう。香港カップが開催されるシャティン競馬場はシンプルなコース形態で直線は365mと中山のそれより長く、出し切りやすい舞台でした。中山競馬場はスタートが3コーナーの途中というレース形態で枠順に大きく左右される舞台で、また、前半は上り坂を上るように、後半は下り坂を駆け降りるようなコース形態のためペース配分が難しいのです。
このことから、陣営はできれば香港でG1タイトルを増やしたかったと思います。
最後の最後までアーモンドアイ陣営が出走を渋ったのはルメール騎手の確保もあると思いますがそれと同じくらいこの舞台関係が引っ掛かってのことだったと思います。
なぜなら有馬で確実に勝てる見込みがあるのなら早い段階で香港Cではなく有馬を選択しているはずだからです。
アーモンドアイはここでも十分好走必至!
今回の記事は私自身の個人的な見解が主となりました。
記事を書く際、過去の戦績、ビデオも確認しましたが勝ちっぷりがよくて、ルメール騎手して「最強の馬」といわせるだけの競馬をしています。
距離は恐らく問題ないでしょうし相手関係も問題なくこなせると思いますし、どうしても中山競馬場でのトリッキーなコース形態で力を発揮できるかだけが課題でしょう。
出し切ったら一番強い馬であると信じています。
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