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競走馬の種付けの方法とは?行われる時期、成功率などについて解説

「種付け」という言葉をご存じでしょうか。競馬のゲームで将来のサラブレッドを生育する時に使われる言葉ですがもちろん現実世界にも存在する言葉です。

 

種付けとは種牡馬と繁殖牝馬を交尾させることで繁殖牝馬に受胎させ、将来の競走馬を誕生させることをいいます。

 

ここでは種付けとはいったいどういうものであるのかをまとめました。

 

種付けが行われる時期

サラブレッドの繁殖期は春から秋にかけてです。

 

サラブレッドは体内時計(概日時計)を持っていて一日の日照時間が長くなるほど生殖活動が活発になります。そのため、日照時間の長くなる春~秋に種付けを行いたいところですが、競走馬に関しては秋まで持ち越さず、4月~5月を中心に遅くても初夏の時期までに繁殖を済ませます。

 

なぜかというと、競走馬としての能力の差がでるからです。特にデビューしたての2歳の競走馬は1か月単位で著しく成長します。そのため早生まれの馬ほど成長が見込めるため有利なのです。

 

ちなみに受胎した繁殖牝馬はおよそ11か月後に仔が誕生します。受胎した1年後に繁殖期が来るため仔を産んだあとにすぐに種付けできるようになっています。

 

競走馬の種付け方法、仕組み

種付けする種牡馬と繁殖牝馬が決まると種牡馬がいる牧場へ繁殖牝馬が向かいます。

 

牧場に到着してすぐに種牡馬と交配するわけではありません。まずは「当て馬」という種牡馬とは別の馬を繁殖牝馬に当てることで繁殖牝馬を発情させます。

 

その後、繁殖部屋にて種牡馬と交配します。交配時間は平均1分ほどです。早くて30秒、遅くても1分30秒くらいで終わります。

 

なお、交配に当たって、種馬、繁殖牝馬それぞれを誘導する人が1人ずつ、何らかの問題が起きた時のためにすぐ動ける人が最低1人、最低でも3人体制で種付けは行われます。その他にも、馬主席を設けている施設では馬主が繁殖を見学することもできます。

 

また、繁殖にあがった牝馬から独立していない仔がいた場合はその仔も母馬が交尾する部屋管理まで誘導します。母馬が交尾する時は近くに仔馬がいると困るため、仔馬は少し離れた場所にとどまります。そのときその仔馬のリードを持つ人が一人います。ちなみに仔馬がとどまる場所からは母馬が交尾する場所が丸見えで、深く考えれば考えるほどなんともいえない気持ちになります。

 

種付けの成功率

牝馬の一般的な受胎率は70%といわれています。言い換えれば30%の確率で受胎しません。受胎しなかった場合は再度交配し、受胎するまで繰り返されるケースが多いです。

 

受胎率は馬によって大きく変わってきます。

 

その一つに物理的なものがあります。

 

例えばドリームジャーニーは2009年の宝塚記念・有馬記念を制した馬です。ドリームジャーニーは420キロと小柄な馬だったために大型牝馬に跨るのに苦労し、通常1分ほどで終わる種付けに90分近くかかってしまうこともありました。

 

そのため牝馬を選ばざるを得ない状況から年間の種付け数はそこまで伸びませんでした。2014年には全弟のオルフェーブルが種牡馬入りし、2016年には種付けシーズン中に骨折事故を起こしてしまい、種牡馬としての役割を果たせるかどうかも危ぶまれています。今後も産駒数の伸びには期待できないかもしれません。

 

受胎率は性格にも影響しています。基本的にはおとなしい馬のほうが受胎率は高いです。では、現役時代に気性の荒かった馬はどうなのでしょうか。

 

例えば現役時代に正規の暴れん坊として多くの観客を盛り上げたゴールドシップはターフでは騎手を振り落とそうとしたりパドックでひと暴れしたり、ゲートに入るのを散々嫌がったりと非常に破天荒な馬でした。

 

ところが種牡馬入りしてからはそれまでのやんちゃぶりが嘘のように落ち着きを取り戻したようで、スタッフの手を焼くこともなく、繁殖馬としての仕事をこなしているようです。2016年、種牡馬初年度は109頭に種付けし、それ以降も毎年100頭近く交配しているようで、非常にうまくいったケースだといえるでしょう。

 

受胎率は精子の量によっても変わります。牡馬の一回の射精量は平均約5L。バケツ半分ほどの量を一度に射精します。これが平均的な量でそれより多い馬もいれば少ない馬もいます。この量の違いは受胎率にも影響を及ぼすのですが極端に少ない牡馬もいました。

 

1971年の天皇賞(秋)を制したメジロアサマです。現役時代に安田記念を制して、当時3200mの距離指定されていた天皇賞(秋)を芦毛馬として初めて優勝しました。

 

引退後は繁殖入りしましたが現役時代にかかったインフルエンザウイルスの治療のために抗生物質を使用したことで生殖機能がほとんど機能しません。その影響は繁殖入りした初年度に受胎した牝馬が0頭という散々な結果で、今後の繁殖馬としての存亡が危ぶまれました。

 

しかし、馬主であった北野豊吉氏の尽力により、10年かけて、わずかですが19頭の産駒が誕生しました。

 

その1頭がメジロティターンという馬です。このメジロティターンは1982年の天皇賞(秋)を制し、父仔で天皇賞を制しました。

 

さらにこのメジロティターンの仔として歴史的ステイヤーとして現在も語り継がれているメジロマックイーンです。名ステイヤーとして名を馳せるこのメジロマックイーンは現役時代に菊花賞・宝塚記念を制し、天皇賞(春)を連覇しました。

 

3代に渡る天皇賞(秋)制覇を目指して出走した1991年の天皇賞(秋)は見事1着でゴール板を通過しましたが斜行の関係で18着まで降着しました。降着制度について論議が起こるとほぼ必ず話題に上がるほど有名なレースです。

 

ところでメジロマックイーンは引退後、無事に繁殖入りします。産駒もそこそこに活躍しましたが、種牡馬デビューした当初の期待ほどの結果は得られませんでした。ところが産まれた仔が意外な馬との交配で真価を発揮したのです。

 

その相手とはステイゴールドです。ステイゴールドと母の父としてのメジロマックイーンとの交配は強い馬が産まれるということでステマ配合と呼ばれるほどでした。

 

そのステマ配合の仔で有名なのは先ほど上がったドリームジャーニー・その弟であるオルフェーヴル、そしてゴールドシップです。特にオルフェーヴルとゴールドシップの活躍は2010年代の競馬をリアルタイムで経験した人であればなお記憶に新しいですね。その2頭もルーツを辿れば受胎率の極端な低さに悩まされながらも、馬主の尽力で誕生したわずかな可能性からメジロティターン・メジロマックイーン、そしてオルフェーヴル、ゴールドシップといった名馬誕生に繋がっているわけですね。

 

種牡馬の価値はどうやって決まる?

種牡馬によって種付け料金は変わってきます。

 

主に下記の3点によってかわります。

1.種牡馬が現役時代にどれだけ活躍したか

2.種牡馬の血統背景

3.産駒の活躍

 

1.種牡馬が現役時代にどれだけ活躍したか

1.の種牡馬が現役時代にどれだけ活躍したかについてはいうまでもないでしょう。

 

例えばディープインパクトは4歳の有馬記念を終えた時点でG1タイトルを7つ獲得していました。そのまま現役続行していてもG1タイトルを獲得できたはずですが4歳の時点で引退することになりました。

 

なぜならそれ以降、現役を続行して何らかの影響で怪我する、もしくは成績を残せなかった場合に種牡馬価値が下がるからです。そのため、ある程度の活躍(ディープインパクトの場合はある程度でくくれないほど素晴らしい活躍を果たしましたが)をし、種牡馬価値が見込まれそうな馬は現役を前に引退するケースが多いです。これに関しては繁殖牝馬にも同じことがいえます。

 

2. 種牡馬の血統背景

血統が近いもの同士の交配を親近配合といいます。別名、インブリードとも呼ばれます。親近配合で産まれた仔は虚弱体質になりやすいため、極力血統は離れたもの同士で掛け合わせます。

 

90年代に種牡馬として来日したサンデーサイレンスは種牡馬として非常に多くの産駒を残しました。

 

しかし、サンデーサイレンスの血を引いた馬が世に多く出ることでサンデーサイレンスの血を引いた仔が引退して種牡馬・もしくは繁殖牝馬になる際、親近配合になると不安視するブリーダーもいました。逆に言うとサンデーサイレンスとつながりのない馬はそれだけで種牡馬価値が上がったのです。

 

例えばディープインパクトのひとつ年上に当たるキングカメハメハはNHKマイル→ダービーの変則二冠を達成。秋の神戸新聞杯のあとに故障で引退しましたが、サンデーサイレンスの血が入っていない種牡馬として非常に多くの馬を輩出。リーディングサイヤーの常連になりました。

 

また、キングカメハメハの仔であるルーラーシップもサンデーサイレンスの血が入っていないため、サンデーサイレンスの血を持つ牝馬との交配が可能なためそれだけで種牡馬価値が上がりました。ルーラーシップの仔も菊花賞馬キセキをはじめダンビュライトムイトオブリガードといった重賞馬を輩出していますね。

 

2019年に亡くなったキングカメハメハのポスト枠としても候補にあがっていて今後種牡馬価値が上がる可能性も十分あります。

 

3.産駒の活躍

産駒が活躍すれば種牡馬価値も上がります。

 

例えば2017年度に初年度産駒がデビューしたロードカナロアは初年度の種付け料金は500万円に設定されていましたが産駒のアーモンドアイ・ステルヴィオ・サートゥルナーリアらがG1を制したことで2019年度の種付け料は1500万円にまで上がりました。このように仔が活躍すれば種牡馬の価値も間接的に上がります。

 

逆に、オグリキャップやテイエムオペラオーのように現役時代に大活躍した馬でも仔が活躍しなければ種牡馬価値は下がります。

 

種付け料金ランキング

2019年の種牡馬の種付け料金ランキングベスト10を見ていきましょう。

 

1位 ディープインパクト 種付け料4000万円

ダントツ1位はディープインパクトです。2019年7月に頸椎の骨折のために安楽死処分が下されました。

 

産駒はいうまでもなく重賞路線で大活躍ですね。ポストディープインパクトが不在であることが非常に悔やまれますが今後の産駒に期待したいですね。

 

2位 ロードカナロア 種付け料1500万円

ディープインパクトに次いで第2位です。

 

初年度が500万円で設定されていましたがアーモンドアイを筆頭に、ステルヴィオやサートゥルナーリアといった産駒がG1前線でも大活躍!

 

ロードカナロアの父であるキングカメハメハが今年亡くなったことでポストキングカメハメハとしての価値も上がり、今後も種牡馬価値は上がるでしょう。

 

3位 ハーツクライ 種付け料800万円

現役時代にディープインパクトに先着したことで種牡馬価値を高めました。

 

産駒は世界リーディングホースにもなったジャスタウェイ、オークス馬ヌーヴォレコルト、中距離路線で活躍するスワーヴリチャード・リスグラシューといった馬がいます。

 

中距離~長距離で結果を残す産駒が多いですね。

 

4位タイ ドゥラメンテ 種付け料600万円

新種牡馬であるドゥラメンテも産駒が産まれる前から高額の600万円に設定されています。ドゥラメンテ自身がキングカメハメハ×サンデーサイレンスの血を持っているので輸入馬との交配が多いみたいです。

 

産駒は早くて2020年にデビューします。

 

4位タイ ハービンジャー 種付け料600万円

外国馬であるハービンジャーも産駒が活躍しているため高額で取引されています。

 

代表産駒はマイル~中距離路線で活躍するペルシアンナイト、牝馬のディアドラ・モズカッチャン、グランプリホースであるブラストワンピースがいます。

 

4位タイ スクリーンヒーロー 種付け料600万円

産駒数に対して意外と高額で取引されているスクリーンヒーロー。

 

有名な産駒はグランプリホースのゴールドアクター、マイル・中距離で無類の強さを見せたモーリスです。

 

7位 ダイワメジャー 種付け料500万円

現役時代にマイルで結果を残し、産駒にもマイル実績のある馬が多いです。長く活躍している種牡馬ですね。

 

ディープインパクトとキングカメハメハが亡くなったことで抜けた種牡馬がいないですがまだまだ活躍できるでしょう。

 

8位タイ モーリス 種付け料400万円

スクリーンヒーローの仔であるモーリスも種牡馬入りしました。デビューは早くて2020年です。

 

8位タイ ルーラーシップ 種付け料400万円

菊花賞馬キセキをはじめ、ダンビュライトやメールドグラースを輩出したルーラーシップは非サンデーサイレンス系でポストキングカメハメハとして注目を集めています。

 

同じキングカメハメハの仔であるロードカナロアの存在から種付け料は意外と上がらず、横ばいでした。今後の産駒の活躍に期待ですね。

 

8位タイ オルフェーヴル 種付け料400万円

三冠馬オルフェーヴルは2019年時点で400万円に設定されています。種牡馬インした2014年は600万円に設定されていましたが仔が3歳の重賞戦で期待以上の活躍しなかったことから、少し評価が下がりました。

 

代表産駒は阪神2歳JF、エリザベス女王杯を制したラッキーライラック。皐月賞を制したエポカドーロを輩出しています。

 

8位タイ ジャスタウェイ 種付け料400万円

ハーツクライの仔で世界リーディングトップにも立ったジャスタウェイ。

 

父ハーツクライ同様晩成傾向にありそうですが、ジャスタウェイの仔であるヴェロックスは皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞3着とクラシック路線で結果を残しました。

 

今後の活躍次第で種牡馬価値も上がることでしょう。

 

ディープインパクトの死因について

ディープインパクトは種牡馬として大活躍しましたが、2019年に頸椎(けいつい)の骨折のために安楽死処分が下されました。

 

晩年のディープインパクトは頸椎が非常に脆くなっていたようです。繁殖馬として仕事をしながらも頸椎の治療がなされていたようです。

 

ところが頸椎の治療が済んだ翌日、突然起立不能となり、手術した頸椎を調べたところ頸椎の骨折が判明しました。人間にも言えることですが頸椎は身体を支える柱のようなものです。

 

そして、馬にとって頸椎は身体を支える柱であるとともに自分の体重を極力4本の脚に分散するようにできています。その頸椎が折れてしまうことで間接的に脚の負担も大きくなり起立不能になったのではないでしょうか。

 

競走馬としても繁殖馬としても活躍したディープインパクトは頸椎骨折による起立不能のために安楽死処分がとられました。

 

種付けにおいて人工授精が行われない理由

人間や家畜には人工授精があります。人工授精は人間の手で確実に望んだ交配を行うことができます。自然交配の最中に起こる事故はもちろん無くなりますし、受胎率も人工授精のほうが高いですね。

 

しかしながらサラブレッドの交配は自然交配が主流ですね。どうしてでしょうか。

 

そもそもサラブレッドにおける人工授精は国際血統書委員会(ISBC)によって禁止されているからです。では、なぜISBCは人工授精を禁止しているのでしょうか。

 

答えは血統的な背景があります。まず人工授精が確立してしまうと人気のサラブレッドに注目が集まります。そうすることで、引退した牡馬のほとんどが種牡馬入りすることがなく廃用になります。

 

また、種牡馬の種付け料は自然交配によるリスクもかねて高額に設定されているため、人工授精が確立して楽に精子が手に入ると種牡馬価値は一気に下がります。楽に手に入るということは不正が行われる可能性もあるわけですね。

 

そして一番大事な点は、一種類の馬の交配が続くとかつてのサンデーサイレンスのように同じ父親の仔ばかりがあふれるようになり、血統的バランスが悪くなり、繁殖用に回せない牝馬も現れます。

 

そうなると、繁殖頭数そのものを減少させるか、一か八か、近親交配せざるを得なくなり、虚弱体質の仔が世に溢れてしまうことになります。そのあたりを考慮した上でいまだにサラブレッドは自然交配が行われているのです。

 

種付けは非常に奥深い

以上が種付けにおける一般的なことがらです。

 

交尾とひとくくりにしてしまうとそれまでですが競走馬は血統的な背景を考えるため、想像以上に奥が深く、関係者も常に交配相手のことを考えながら交配する馬を選んでいるそうです。

 

現役でターフで走っている競走馬も血統背景を厳選して選ばれたことを考えると一頭一頭感慨深いものを感じますよね。

 

競馬新聞等で両親をチェックすることができますし興味のある方はその馬のルーツを探ってみてもいいかもしれません。

 

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