2016年3月27日中京競馬場で行われた高松宮記念のタイムは1.06.7。
あっと驚くコースレコードタイムでした。
実はこの日は朝からの条件戦でもレコードが塗り替えられており、高松宮記念が3度目の更新。
4~5年ぐらい前から日本競馬のタイムが速いことがあちらこちらで話題になってました。
原因は色々とあるのでしょうが、なぜ馬場が高速化するのかを考えてみましょう。
馬場が高速化する原因
日本の競馬がまだ国内だけのギャンブルだった時代は競馬場の芝には野芝だけを使用しており、寒くなると枯れてしまう野芝だけの競馬場は冬場には乾燥した土と枯れた野芝で茶色くなってました。
競馬の国際化を目指すようになった頃にJRA は『オーバーシード』という方法を編みだし、これを実践しました。
『オーバーシード』とは、野芝が枯れる時期に寒冷地でも使える芝である洋芝の種を撒いて育成する方法です。
これに成功した日本の競馬場は一年中緑の絨毯に覆われることになります。
ところが年中芝が生え揃った状態で芝の刈り込みを行うとドンドン走破時計が速くなり、馬が故障する事態が発生しました。
この事態にJRA は芝の『エアレーション』と『シャタリング』の作業を開催前に行うようになりました。
『エアレーション』とは地面に縦穴を掘って路盤(芝を張るための地面)に空気をいれて柔らかくして、土に含まれる微生物の活動を活発にさせることです。
『シャタリング』とは路盤の土をカッターのような刃で掘り返して路盤自体を柔らかくすることです。
中京競馬場開催「高松宮記念」での超高速馬場
これを各競馬場で開催前に行うのですが、実はこれが今回の高松宮記念が行われた中京競馬場での超高速馬場の原因になったと言われています。
中京競馬場も開催前に『エアレーション』と『シャタリング』を行ったのですが、開催3週目にかなりの雨が降り、不良馬場で競馬が行われました。
この大量に降った雨が『エアレーション』や『シャタリング』作業で排水性の良くなった馬場に相当量含まれ、そこを競走馬が走って路盤を固めて締めてしまったため、その後の晴天が続いた一週間で馬場の路盤はカチカチになってしまいました。
その上、4週目にAコースからBコースへの変更で荒れた内側は使用されず、内側に綺麗なグリーンベルトが誕生してしまい、綺麗に生え揃った芝に固い路盤、当然絶好の超高速馬場になってしまいました。
予想もしない事が重なりあってこの馬場を作り出したのです。
この事態に一部ファンからは馬場状態への不満の声が出ましたが、JRA は常にホームページで
芝張替(約17,000m2)を行い、芝張替を行わなかった箇所については芝の更新作業を実施しました。その後、散水や肥料散布、芝刈り等の生育管理に努めた結果、芝の生育は概ね順調で全体的に良好な状態です。芝馬場のクッション性確保のためエアレーション,シャタリング作業を実施しました。芝の生育管理のため、中間日に散水を実施します。
という作業コメントを必ず掲載しています。
馬場の高速化によるレースへの影響とディープインパクト産駒
さて、馬場の高速化が競馬にどのような影響を与えているか?
やはりディープインパクト産駒の大活躍でしょう。
軽い芝への適性が高いディープインパクト産駒はその父から受け継ぐスピードを遺憾なく発揮できることで日本競馬界を席巻しています。
そしてそのスピード全盛の馬場状態は馬の故障(骨折や屈腱炎の発症)へも無関係とは言えません。
ヨーロッパのような重くてスピードの出ない馬場へと向かうのか、スピードを維持しながら故障のない馬場を造り上げるのか、JRAには待ったなしの馬場改良への施策が求められています。
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